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第5回 Lux Pacifica 大会概要報告

Lux Pacifica 委員会委員長 中村 肇

4. 大会実施状況

4.1論文発表

 図1に今回の大会の参加国別の論文発表件数(プロシーディングス調べ)を示す。論文の全発表件数は53件で、この中では、日本の36件が突出して多い。この36件の内分けは所属別では学校関係が30件、公的研究所(国土交通省)が1件、産業界(メーカーなど)5件であった。


図1 参加国別論文発表件数

 論文の全発表件数の53件は、口頭発表の30件とポスター発表の23件に分けられる(図2(a)、図2(b))。このうち日本からの発表は口頭発表が15件(全体の50%)、ポスター発表は21件(全体の90%)であった。わが国は、環太平洋地域の照明の学術・技術分野において、最も活発な情報発信国である。量的にはリーダーシップ的存在を担っている。

 従来のLux Pacifica大会における日本の論文発表件数は第1回大会(上海)が13件、第2回大会(バンコク)が37件、第3回大会(名古屋)が107件、第4回大会(ニューデリー)が16件である。今回の第5回大会の36件は、国際的知名度を向上するためにほぼ十分な数であったと思われる。

 日本の研究や技術などの成果を、Lux Pacificaのような国際会議を通じて海外へ普及する場合、今後の課題としては以下を考慮することが望まれる。

 照明学会で今後取組むべき重要な課題として、照明の新技術に関する国際規格化推進のリーダーシップ確保、国際規格への提言(欧米主導規格の導入からアジア圏からの提案強化への転換)があげられている。このためには欧米の照明技術に整合した、日本の研究や技術などの成果を基に、欧米と交流を深めるためのコミュニケーション力を高めるとともに、研究や技術のオリジナリティ、有用性、新規性などについて対等に議論しあう機会を多くもつことが望まれる。このようにして影響力の向上を図るとともに、照明技術の国際標準化活動に貢献し、日本の実情に合った提言をすることが望まれる。

 技術立国を目指すわが国の産業は、多くを産学官の連携において進められ国際的地位を築いてきた。日本から発信された国際規格を普及、定着することができれば、海外において日本の技術や製品の浸透に役立ち、経済的実力を高めることに貢献することが可能になると思われる。このためには、学術分野の研究課題と、産業界が求める技術的課題が連動した形で、必要に応じてタイミングのよい結論付けを図ると共に、関連する情報を海外へ発信すること、また、基本的な重要課題に対しては中長期的視野に立って取り組むことが重要である。

 また、Lux Pacifica大会のような国際会議で研究発表された成果は、査読を受けた正規論文として定期刊行される学術誌に掲載をしておくことも肝要である。

4.2参加者・参加国

 国別の参加者(登録者)数を図3に示す。Lux Pacificaの加盟国以外の国も含めて、合計10ヶ国から105名が参加した。このうち日本からの参加者は同伴者を含めると39名であり参加国中最も多かった。次いで開催国のオーストラリアの36名となっている。日本からの参加者数と論文発表件数は最も多く、大会の成功に大いに貢献した。


図3 国別の参加者数

 会議のみの参加者は、オーストラリアが33名で最も多く、次いで日本の31名となっている。

4.3大会プログラム

 ケアンズはオーストラリア北部の熱帯に位置し、その内陸には熱帯雨林が、海にはグレートバリアリーフがあり、それらは世界遺産にも登録されている。ケアンズはすばらしい自然が手軽に満喫できる観光地、あるいはリゾート地として有名である。また日本人の観光客も多い。大会の行われた7/23〜25は現地では真冬に相当するが、日本の春又は秋の気候に近い。大会会場のケアンズインターナショナルホテルは16階建ての、ケアンズのなかでは一番の高層ホテルである(図4)。観光客でにぎわうストリートのすぐ近くに位置しており、ショッピングなどにも便利である。


図4 大会会場のケアンズインターナショナルホテル

表3(a) 大会プログラムの概要 (7月25日)

表3(b) 大会プログラムの概要 (7月26日)

 7月24日(日)の午後には、参加登録の受付場所がケアンズインターナショナルホテルの2Fロビーに設けらけた。Welcome Partyは、大会会場のケアンズインターナショナルホテルの前の通りをはさんで反対側にあるRainforest Dome(熱帯雨林ドーム)で、その日の夕方6時から始まった。ドリンクと軽食の立食パーティの形式であった。Rainforest Domeは温室形式の大型ドームで、ここには各種の熱帯植物と共にコアラ、ワニ、ニシキヘビ、野鳥などの珍しい動物が飼育され、通路を歩くことによりそれらを観察できる。おもしろい趣向のWelcome Partyであった。Warren Julian議長の歓迎の挨拶もあり、なごやかな雰囲気で行われた。

 表2に二日間に及んだ大会プログラムの概要を示す。開会式はA会議室でJames Jewell氏の司会により行われた。まずJewell氏からLux Pacificaの沿革や目的などが紹介され、次にWarren Julian議長の開会の挨拶があった(図5)。次いで開催国のオーストラリア・ニュージーランド照明学会のIan Cowling会長から歓迎と祝辞の挨拶があった。


図5 開会式でのWarren Julian議長の挨拶

 その後、A会議室とB会議室の2会場に分かれてセッションが始まった(図6)。各セッションの座長は、国際組織委員会の委員やオーストラリア・ニュージーランド照明学会の委員などが担当した。著者はLighting Designの座長を担当した。ポスター発表の会場はセッションの行なわれた会議室の前のロビーに設けられ、熱心な討論が行われた(図7)。


図6 口頭発表風景


図7 ポスター発表風景

 大会第一日目のセッション終了後にDinner Partyが開催された。ケアンズインターナショナルホテルからバスで約40分かかるところにある自然動物園へ会場を移して、夜行性動物探検ツアーを兼ねて行われた。真っ暗な熱帯雨林での散策や、ボートに乗って沼地をクルージングすることにより、夜行性動物やワニなどの爬虫類、鳥類などが見られた。視界が開ける広場では満天の星空観察ができた。

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