第5回 Lux Pacifica 大会概要報告
Lux Pacifica 委員会委員長 中村 肇
1.はじめに
環太平洋照明会議(Lux Pacifica)の大会は、太平洋沿岸の国々における照明関連の研究者、技術者および照明デザイナーらが、一堂に会して、照明に関連する技術やデザインの成果を発表したり、討論、情報交換および国際交流を行う国際会議である。この大会は後述する加盟国のいずれかの国で4年に1回開催される。各国の照明技術の発展と向上を目指すことを主目的としている。さらに、発展途上国が照明分野の団体を組織化する場合、これに対する支援を行ない、これらを通じてその国の照明技術の向上を支援することも目的の一つである。
Lux Pacificaの第1回大会は、1989年4月に中華人民共和国の上海市で開催された。第2回大会が1993年11月にタイ王国のバンコク市で、そして第3回大会が1997年10月にわが国の名古屋市・名古屋国際会議場で開催され、第4回大会はインドの首都デリー市(ニューデリー地区)で開催された。
今回、第5回大会がオーストラリアのケアンズで2005年7月23日から25日にかけて開催されたので概要を報告する。
2.国際組織委員会の活動状況
現在、Lux Pacificaには、オーストラリア・ニュージーランド照明学会、北米照明学会、インド照明技術者協会、中国照明学会、タイ照明協会、ロシア照明学会、日本照明学会の7組織が加盟している。初代の議長は北米照明学会のJames Jewell氏で第3回大会を終えた時点で、オーストラリア・ニュージーランド照明学会のWarren Julian博士に交代した。その後、変更はなく現議長にはWarren Julian博士が継続して就任している。
今回の国際組織委員会は7月24日と25日に渡り、本大会の会場であるケアンズインターナショナルホテルで開催された。インド代表のHari Mamak氏を除く国際組織委員と、オブザーバーとしてオーストラリア・ニュージーランド照明学会の会長と役員が出席した。
この会議でLux Pacificaの体制についてまず議論が行われた。この結果、現体制が維持されることになった。CIEやLux Europa(ヨーロッパ照明会議)が、どちらかと言えばヨーロッパの国々を中心に運営・活動されていることを意識して、太平洋沿岸諸国の人々によってLux Pacificaを維持していきたい意向が雰囲気として感じられた。Lux Pacifica議長にはWarren Julian博士が引き続き就任し、副議長には日本の照明学会を代表して著者が就任した。今回の国際組織委員会のメンバーリストを表1に示す。
表1 Lux Pacifica 国際組織委員会 (2005年度 Cairns 大会)
Functions | Countries | Names | Societies |
---|---|---|---|
Chairman | Australia | Warren Julian | Illuminating Engineering Society of Australia and New Zealand |
Vice Chairman | Japan | Hajimu Nakamura | Illuminating Engineering Institute of Japan |
Committee member | U.S.A | James Jewell | Illuminating Engineering Society of North America |
Committee member | India | Hari Mamak | Indian Society of Lighting Engineers |
Committee member | China | Liu Shiping | China Illuminating Engineering Society |
Committee member | Thailand | Jamnarn Hokierti | Illuminating Engineering Association of Thailand |
Committee member | Russia | Gennady Shakhparunyants | Illuminating Engineering Society of Russia |
今後は、表1の国際組織委員の体制で2009年の第6回大会開催に向けて活動を行うことになった。次期開催国の候補としてはロシア(できるだけ太平洋側の都市とする)とタイの2ヶ国が上がっている。
次回の国際組織委員会は、2007年に次期CIE大会の行われる北京で開催することになった。
3.第5回大会の開催準備
第5回大会に向けて構成されたLux Pacifica委員会の委員構成(2005年度)を以下に示す。
委員長 | 中村 肇 | (松下電工) |
幹 事 | 中村 芳樹 | (東京工業大学) |
委 員 | 大井 尚行 | (九州大学) |
北村 薫子 | (武庫川女子大学) | |
奥田 紫乃 | (広島国際大学) | |
秋月 有紀 | (立命館大学) | |
掛橋 英典 | (松下電工) | |
谷口 正成 | (東北文化学園大学) |
本来は開催日の1年半位前には、大会開催のファーストアナウンスメントや論文募集要領が学会誌などでパブリッシュされるべきである。しかし、第1候補地で第5回大会を開催するかどうか判らない状態が続いたため、国際組織委員会は第2候補地のオーストラリアで開催するための準備を、従来の大会と比べると遅れてスタートせざるを得なくなった。そのため2004年10月になってやっとファーストアナウンスメントがホームページの形でWeb上で公開できる運びになった。
準備期間が短かいので、Warren Julian議長からの決定事項は、出来るだけ早く関係者に知らせる必要がある。そこで、第4回大会(Lux Pacifica 2002)の発表者、CIE 2003の発表者など、第5回大会で発表する可能性のある人、約100名のEメールアドレスのリストを作り、連絡網の体制を構築した。これを用いて開催日の変更、講演募集案内、アブストラクト及び講演申込書の作成要項などを、発表する可能性のある人に早期に連絡することができた。
2004年11月に第5回Lux Pacifica大会のPRのため、開催案内と講演募集の原稿(和文と英文)を作成し、日
本の照明学会ホームページに掲載した。会告原稿も作成し、照明学会誌の平成16年12月号、平成17年1月号に掲載した。2005年1月にアブストラクトを締切ったあと、2月に発表採択通知を申込者へ発送した。日本からの分野別のアブストラクトの申込み件数を表2に示す。表2 日本からの分野別のアブストラクトの申込み件数
その後、本論文は4月に締め切り、各Lux Pacifica委員によって査読を行ない、必要に応じて発表者に修正依頼を行なった。修正後の論文を印刷物の形で5月に国際組織委員会へ送付した。国際組織委員会から発表者へ採択通知が6月に発送された。座長が紹介するための口頭発表者の経歴書の作成を各発表者に6月に要請し、7月にこれを集めて国際組織委員会へ送付した。
国際組織委員会のWarren Julian議長へは、日本からの発表申込み書のフォーマットや論文作成要領などを逐一連絡し、議長の了解を得てから発表者に連絡した。日本のLux Pacifica委員会が行なった論文発表のオーガナイズは、加盟国の中で最も優れていると連絡してきた。
日本から第5回大会に参加するためのツアーを行なうかどうかについては、関係者から意見をヒアリングした。オーストラリアでは英語が使われており、治安も良いためツアーは必要ないという意見が多かった。従って、今回は参加者が独自で訪問と滞在の手配を行なった。
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