環境保全の観点から照明用のエネルギーの有効利用化を常に図らなければならないのは当然のことである。
一方、豊かな生活及び円滑な諸活動の実施のために、安全・明視・快適の面から照明の質(量を含む)の確保が必要である。実際には、省エネルギー対策として安易な消灯、減灯が行われ、照明の質が損なわれている。このような事態をなくすために本質的な省エネルギー照明(主として照明計画、照明設計及び照明環境評価の各方面からのアプローチ)の研究が行われることを要望する。
従来の光源の改良路線の延長線上にあるものではなく、これまで用いられていない原理または現象などを利用する新しい光源や、これまで欠如していた新しい機能をもつ光源などの開発の端緒を開く研究を対象としている。研究対象とする光源の用途については、人間生活に有用であること以外には特に制限を設けない。即ち、一般照明用の光源はもちろんであるが、必ずしも可視光源である必要はなく、紫外放射源、赤外放射源なども含む。
エレクトロニクス技術の進歩に伴い、照明用の各種点灯装置が開発されてきた。
一方、世の中のニーズも変わってきており、これに適合する点灯装置の期待も大きい。
従って、電磁環境を考慮した蛍光ランプあるいは高圧放電ランプ用の点灯回路や制御回路の低損失化、小型化、薄型化等のための回路方式、ならびに部品、デバイスに関する基礎または応用研究を要望する。
最近,光放射によって活性化して有効な作用効果を示すような材料・デバイスが種々開発されつつある。これらについて応用も含む新規性のある研究を期待する。
光放射の利用分野の進展は最近とみに顕著であり、照明分野以外においてもその応用が極めて活発である。情報・通信、精密加工、生物応用等々枚挙にいとまがない。これらの内容をみると、短波長紫外放射のように波長域の拡大、LEDや半導体レーザのように特定の方向性や発光形態を持つものなど、従来の照明用光放射の計測手段で解決しがたいものが多い。
従来から光放射の標準や計測技術の研究は、照明学会の研究対象として捉えてきたが、現在の状態は光放射技術の未整備のためこの期待に十分応えているとはいえない。今回照明学会の特定研究課題として従来の測定方法の概念を変える新しい光放射の測定技術の研究に期待する。
UV(紫外放射)は、光放射の中では、フォトンのエネルギーが大きく、人体やその他の生体・生物、物質などに照射されると、種々の作用効果を及ぼすことが知られている。また、UVは、太陽光や各種の視覚支援用の人工光源からの放射に不可分的に含まれていることから、人間やその他の生物などは、日常の光環境において、常にある量のUVの照射を受けていることになる。従って、UVの作用やその評価方法や、UVの計測方法などを究明し、その成果を人類を含めた地球環境の維持・快適化に活用することは有効であり、いろいろな立場からの研究推進を期待する。
一方、波長の長いIR(赤外放射)の作用は、例えば生体の深部へ浸透して機能することが知られているが、その解明は進んでいない。また、IRのフォトンエネルギーは小さいのでIRの定量評価には種々困難な点が多い.これらの問題について新規性のある研究を期待する。
諸技術の進歩に伴い電気エネルギーを利用した照明の発展は著しい。
一方で、人がより自然光を求める動きがある。また一層の省エネルギーを実現することが必要である。そのために自然光の有効利用を考える必要がある。しかし、自然光は時間や季節による状態の変動も大きく、使いにくいことも事実であり、今までの研究もまだ十分とはいえない。
そこで自然光を大量に室内に取り込む、あるいは窓のない部屋にまで送り込む画期的な方法や、自然光と人工光とを効率的に組み合わせた照明システム、その他自然光の有効利用に関する幅広い応用研究を期待する。
照明環境を評価する物理的要因としては、水平面照度、円筒面照度、輝度、演色性、モデリング、グレアなどがあり、また、心理的要因としては、明るさ、読みやすさ、色の見え方、快適性、まぶしさなどがある。照明環境を評価するには、これらの物理的要因と心理的要因との対応関係を定量的に明らかにし、物理的条件から心理的な条件を定量的に推定できることが望ましい。
快適で効率的な照明環境の設計をするための指針を与える研究を期待する。
将来、照明及びその関連分野に携わることになる研究者の卵は、大学、高専、高校ならびに専門学校の学生、生徒の中にいる。このような卵をひなにするためには照明及びその関連分野についての興味や問題意識を持たせることが大切で、そのためには、データをとりながら特性を理解させるような実験テーマ、理論や現象などをわかりやすく表した模型、あるいは理論や現象などをわかりやすく説明したビデオやスライド等が大いに役立つものと思われる。この課題では、このような教育手法や教育用教材の開発が行われることを要望する。
以上