未来を照らす照明学会の新たな針路と進路

照明学会 会長挨拶

 照明学会は、1916年(大正5年)11月29日に創立され、今年(2023年)は創立107年目を迎える。創立当時は、大正デモクラシー(democracy)と言われた大正時代の民主主義、人民が権力を所有して行使する政治形態にあり、国の在り方を決める権利は国民が持っている」と考える政治体制下にあった。科学技術の出発点とも言えるわが国照明技術の発展や照明知識の普及に貢献する時代の幕開け、正しく日本の未来を照らす照明学会の誕生であった。定款が示す照明学会の目的は、照明に関する学理及びその応用に関する研究調査並びにその成果や知識の交換を行い、もって学術、技術、文化及び関連事業の振興と社会の発展に寄与することとされ、その針路は明確である。『針路』とはコンパスの指針であり目的に向ける方位であり、『進路』とは目的に向かう道筋である。正しい『進路』を進むためには、外乱(ふねの航海では風潮流や海流等)の影響を予想した『針路』を選ばなければならない。照明学会が直面する現状の課題は、針路選定の誤りであり、正しい進路に向かう新たな針路が必要であることを物語っている。

 その上で、照明学会の具体的な活動は、機関誌発行(広報)、照明に関する編集・出版・標準・企画・研究・調査・教育・助成・表彰の各事業を推進することが示されている。

 そこで必要とされることは、照明学会の発展を期すために、具体的な活動を展開するにあたり、「リスク管理(Risk Management)」と「危機管理(Crisis Management)」の違いを理解することである。

 『雨が降りそうなので傘を用意する』という「リスク管理」の事例を示す。「リスク管理」の基本は、想定されるリスクが“起こらないように”、そのリスクの原因となる事象の防止策を検討し、実行に移すことである。究極のリスク管理は、想定されるリスクを予め抑え込んでしまうことである。次に、『雨が降ってきたのでコンビニで傘を購入する』という「危機管理」の事例を示す。「危機管理」は、危機が発生した場合に、その負の影響を最小限にするとともに、いち早く危機状態からの脱出・回復を図ることが基本となる。危機は「いつか必ず起きる」という大前提に立って検討を進めることが、危機管理の第一歩である。

そのような心構えに基づいて、以下の3点を当面の進路目標としたい。
1.財政基盤改善
2.企画・広報普及活動
3.事務局業務省力・効率化・労働環境改善

 照明学会を支える会員は、正会員、専門会員、名誉会員、終身会員、学生会員、賛助会員である。会員各位のご理解とご支援は必要不可欠であり、あらためて、会員各位のご協力をお願いする次第である。

令和5年(2023年)6月 吉日  照明学会 会長   古莊 雅生

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