写真1 全景
神戸市では、震災時にお世話になった方々への感謝の気持ちを込めて、市民・企業・行政が連携して開催する「KOBE 2001 ひと・まち・みらい(神戸21世紀・復興記念事業)」(2001年1月17日~9月30日)では、シンボル事業の一つである「光」で、21世紀の魅力に溢れた神戸のまちづくり「光都・こうべ」を目指している。
その一環として、神戸の夜の魅力である“ひかり”をテーマとするまちづくりとして、建物などのライトアップ照明デザイン設計競技が行われた(写真2)。この内、優秀作品の「神戸市立博物館」は、2001年5月よりライトアップを開始し、21世紀の神戸の夜間景観資源として活用されている。
「神戸市立博物館」は旧居留地内に1935年(昭和10年)に銀行として建築された建物で、国指定登録文化財である。1982年に「国際文化交流、東西文化の接触と変容」をテーマとする博物館として開館した。
写真4 デザイン照明柱
ライトアップについては、照明コンセプトを「歴史を映し出す美しい暗さの美学」とし、無意識に明るくするのではなく、影を大切にしながら省エネルギーを考慮した計画とした。照明設備は国指定登録文化財であるため建物自体への穿孔など破損を伴う工事ができないことを考慮しながら照明計画を立案している。
(1)建物中央部分は、柱のボリューム感を出すため、柱の両脇に設置したデザイン照明柱(写真4)により、150w高演色形高圧ナトリウムランプを用いて、柱のシルエットを印象的に浮かび上がらせた(写真1)。
(2)建物両端部分は、地中埋設の照明器具により、12V50W反射形ハロゲン電球を用いて、コーナーとしての存在を明瞭にしながら見えない部分の気配を感じさせる照明とした(写真3)。
(3)建物上部は建物と空との稜線を優美なライン照明により、チューブライトを用いて間接照明している。
(4)建物のサイン部分は既設の道路灯にスポットライトを共架し、70W高演色形メタルハライドランプを用いてサインを効果的に浮かび上がらせた。
博物館としての重厚なイメージを損なうことなく、神戸を代表する歴史建造物として周囲と調和したライティングを目指した。
※本文は照明学会誌第85巻 第10号 2001年10月「照明のデータシート」より引用しています。学会誌にはさらに照度分布図や器具構成が掲載されています。