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照明デザイン賞受賞者一覧

照明デザイン賞は、光を素材とした、優れたデザイン的内容を持ち、創意工夫に満ちた作品を顕彰するものであり、近年、国内に竣工した空間に対する光環境や照明デザインにおいて、社会的、文化的見地からも極めて高い水準が認められる独創的なもの、或いは新たな照明デザインの可能性を示唆するもので、時代を画すると目される優れた作品を称え表彰するものです。

2020年 照明デザイン賞 講評

総評

応募総数は52作品で1〜2次審査を経て現地審査対象となったのは11作品。審査員(2名ずつ)が各地に赴き関係者の説明を受けながら審査を行った。今回は外部から審査員を迎えたことで照明デザインの間口や奥行をさらに広げることができたのではないだろうか。最終審査では活発な議論が交わされ厳密かつ十分な選考過程を経て、8作品が受賞の栄誉に浴することとなった。どの作品も明確なテーマと優れたデザイン性を有し、これからの照明に新たな視座を与えるものであった。

(審査員長 富田 泰行)

最優秀賞:武蔵野美術大学 ZERO SPACE

撮影:NACASA&PARTNERS INC.

受賞者:
山下 裕子(Y2 LIGHTING DESIGN Co., Ltd.)
作品関係者:
事業主:武蔵野美術大学
デザイン:五十嵐 久枝(イガラシデザインスタジオ)稲垣 竜也(イガラシデザインスタジオ)
施工:清水建設

作品コンセプト:

 「ZERO SPACE」は武蔵野美術大学内にあり、進路のWEB検索スペースから、多様な用途に対応できる「場」へのコンバージョンである。東西2面が35mのガラスで外光がたっぷり入るコンクリート建築の1階。 外の景色が素通しで、開放的だが通路の様に無意識だった空間を、「場」として意識する仕掛けとして、天井のあり方を検討し、白い“ゼロ”を浮かべた。アートやデザインを学ぶ学生達に向けて、アイディアが誕生する「始まりのゼロ」という想いの形でもある。“ゼロ”はスケルトンの黒天井を背景に、グレアレスな人工光と自然光の床反射を受け、自身が発光している様な視覚効果で空間の核になっている。また照明回路をゼロの内と外、配置をゼロに沿わせ、大きな「光のゼロ」のバリエーションで4シーンを構成し、自然光の変化に合わせてゆっくりチェンジさせ、時間を持つ空間にした。美大らしい新しい創造空間の「場」として運用されている。

講評:

 ブラック&ホワイトのコントラストがひと際目を引くフォトジェニックな空間である。それが現地に行くと単なる写真映りのよい作品でないことに気づかされた。一見では照明器具が見えないのにゼロ天井と石ころベンチが発光して見える。この場所はかつてMACが列を成して置かれていた学生達の情報拠点であったがいつしかその役目を終え、ZEROという始まりを予感させる学びの場の象徴空間へとコンバージョンされたのだ。光を帯びた天井形態は誰がどのように決めたかが現地審査で話題になった。かなりの紆余曲折があったようである。空調など設備との取り合いや限られた予算に加え、場所の意味性に基づく明快で大胆な表現の追求などさまざまな議論の末に生まれたカタチであった。低予算を嘆く割には器具取り付けや配光制御、運用に工夫が見られたのも高い評価につながった。このシンプルで大胆なコンバーションの光は最高得点を集め審議でも多くの評価を獲得し最優秀の栄誉に輝いた。

(富田 泰行)

優秀賞:谷口吉郎・吉生 記念金沢建築館

撮影:YAMAGIWA(撮影:大川 孔三)

受賞者:
谷口 吉生(株式会社 谷口建築設計研究所)
岩井 達弥(岩井達弥光景デザイン)
作品関係者:
事業主:
山野 之義(金沢市)
建築設計:

荒川 照陽(株式会社 谷口建築設計研究所)
木藤 美和子(株式会社 谷口建築設計研究所)
設備設計:
松本 尚樹(株式会社 森村設計)
照明設計:
石井 孝宜(岩井達弥光景デザイン)

作品コンセプト:

 金沢出身の著名建築家谷口吉郎氏ゆかりの地に建設された、建築・都市に関するこのミュージアムは、様々な活動を通じ、世界へ建築文化の発信拠点を目指している。
建築の歴史と現在そして未来をつなげる光を、吉郎氏設計の迎賓館別館游心亭をLEDで再現した常設展示室の光、最新の技術で様々な企画展に対応する企画展示室の光、そしてそれらを包み込む長男吉生氏の建築が纏う光の三つの光によって実現した。

講評:

 日本を代表する建築家谷口吉郎氏・谷口吉生氏親子の住居跡に建つ、建築・都市の様々な活動を金沢から世界へ発信する建物である。設計は谷口吉生氏。1階の企画展示室では、主照明に様々な展示に対応出来る多機能スポットライトを採用し、ベース照明と主照明用ライティングトラックを28mm幅のスリットに納めてスッキリした天井面を作り出すことに成功した。2階の常設展示室では、谷口吉郎氏の代表作の一つ、迎賓館赤坂離宮和風別館「游心亭」の広間と茶室で使われていた白熱灯や蛍光灯の照明をLEDで忠実に再現し、谷口吉郎氏の明るさや照明に対する考え方を、来場者が直接体感できる空間となった。今回新たに庭の水盤に映り込む植栽の照明と茶室待合の障子の竹の葉陰の演出を加えることで、金沢でしか味わえない景色を作り出した。ロビー内部からのもれ光を生かした建物外観照明は、この建築館を歴史的街並みの中に穏やかに溶け込ませる役割を果たしている。

(近田 玲子)

優秀賞:ショウナイホテル スイデンテラス

撮影:平井 広行

受賞者:
岩井 達弥(岩井達弥光景デザイン)
作品関係者:
事業主:
YAMAGATA DESIGN 株式会社
建築設計:
坂茂建築設計
構造・設備設計:
Arup
ランドスケープ:
オンサイト計画設計事務所

作品コンセプト:

 本施設は、新産業創出を目指すベンチャー企業等が研究活動を進めるサイエンスパークにおける、地元と来訪者を結ぶ宿泊、飲食、温浴、文化、育児の施設整備計画である。
庄内の美しい原風景である水田に優しく挿入された建築が、やわらかい光を纏い水田に浮かぶ光景を基本イメージに、間接照明の光で建築を表現し、四季折々の水田風景との調和をはかり、やすらぎの空間にふさわしい、人によりそう光環境創出をめざした。

講評:

 水鏡という手法がある。宇治の平等院鳳凰堂がその代表例である。建物が水面に反射して生じる実像と虚像が醸し出す浮遊感のある風景が私たちを不思議な感覚に誘う。

平等院鳳凰堂が意図したのは<西方極楽浄土>だったそうだが、スイデンテラスの場合も、<水田>に見立てられた大きな水面の中央の<アゼミチ>(に見立てられたメインアプローチ)を辿る中で、異空間への到達が準備される。優れた宿には川のせせらぎや潮騒の音あるいは山の眺望など宿泊者を日常生活から離脱させる<設え>が不可欠なのである。

水鏡―反射のデザイン原理は照明デザインでは間接照明という手法で表現される。間接照明による光の反射で照らし出された天井や壁面からのほのかな光は建築空間を浮かび上がらせる。宿泊フロントやレストラン、ライブラリーが配された共用棟では切妻屋根の構造体のシルエットを浮かび上がらせるし、浴室棟では野趣あふれる屋根構造がマニエリスムの館、パラッツォ・デル・テに紛れ込んだかのような錯覚をもたらす。間接照明はコンビニのフラットな照明に慣れた目にはほの暗く感じられるかもしれないが、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」を持ち出すまでもなく、ほの暗さは日本文化の伝統に内蔵されていたものではないだろうか。

(渡辺 真理)

優秀賞:The Okura Tokyo

撮影:佐藤振一写真事務所

受賞者:
面出 薫(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
田中 謙太郎(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
岩永 光樹(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
梅原 真次(株式会社 ホテルオークラ東京)
建築・ID・ランドスケープ:
谷口 吉生(谷口建築設計研究所)
インテリアデザイン:
Terry McGinnity(GA design)
建築・ID・ランドスケープ:
田口 晃(大成建設一級建築士事務所)
インテリアデザイン:
若本 俊幸(株式会社 観光企画設計社)

作品コンセプト:

 2019年9月にThe Okura Tokyoとしてリニューアルオープンしたこのプロジェクトでは、「究極の和風」と「現代の快適性」の融合をコンセプトに照明計画がされた。特徴的なオークラロビーは忠実に再現されLED光源によって柔らかな光環境を見事に現代に蘇らせた。車寄せとなるオークラスクエアでは水盤に映り込むプロムナードスクリーンの間接照明と柳の木のライトアップが印象的な景色を浮かび上がらせている。

講評:

 建築的、社会的にも注目度の高い日本を代表する本ホテル改築計画には、建築やインテリアさらにランドスケープそれぞれに高品質なデザインが求められた。おのずとそれらの照明デザインにも求められた高いデザイン性と完成度の期待に応え、目標とする空間の光環境を完成させたことは高い称賛に値するものである。

 伝統の継承と現代技術への移行という理念のもと、「究極の和風」実現のための課題として、豊富な光の階調、柔らかな輪郭の陰影、自然光の移ろいに呼応、やすらぎの演出、自然光に倣った光をかかげ、それらを見事に成し遂げると同時に、「現代の快適性」を適切なLED化と制御ダイアグラムによって実現させた。また、ホテル特有の多様な業種や空間種別に対し、緻密で繊細な対応を行い、最終目標であるお客様本位の高品質なホスピタリティーの光環境が作り上げられたことは、照明デザインに携るプロフェッショナルの手本とすべき業績である。

(岩井 達弥)

入賞:ミライon(長崎県立長崎図書館及び大村市立図書館、大村市歴史資料館)

撮影:中村 絵

受賞者:
牛込 具之(株式会社 佐藤総合計画)
石原 広司(株式会社 佐藤総合計画)
武石 正宣(ICE都市環境照明研究所)
作品関係者:
事業主:
長崎県、大村市
電気設計:
関根 秀幸(株式会社 佐藤総合計画)
建築設計:
佐々木 信明(株式会社 INTERMEDIA)

作品コンセプト:

 長崎県大村湾を臨む敷地に建設された図書館である。 緩やかな湾型平面と段々状に重なる書架閲覧エリアを、一つの大屋根で包込む建築計画を意識しスーパーアンビエント&ヒューマンタスクの光環境を計画した。スーパーアンビエントは大きな間接照明で柔らかな表情の大屋根天井を見せることを考え、ヒューマンタスクは書架と一体化させミニマムかつパーソナルな光とした。

小さな光で長崎の夜景のような光景を創出し、同時に図書館で国内初のZEB-Readyを実現した。

講評:

 一枚の大屋根に包まれた開放的な空間でありながら、「本を読む」のみならず、本との「出会いの居場所」を、大小の空間構成と照明手法によって創出している。日変化で移り変わる自然光を、南面するエクステリアの芝に覆われた地面に反射させたガラスウォールから採り込み、大屋根の間接照明が心地よい、新しいタイプの図書館建築といえよう。閲覧室では、書棚用のカワイイ特注器具の輝度が、文字と触れる楽しみを演出している。

(木下 史青)

入賞:環長崎港夜間景観整備 平和公園地区

撮影:株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ

受賞者:
面出 薫(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
中村 美寿々(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
木村 光(株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
長崎市

作品コンセプト:

 国際平和都市・長崎を象徴するこの場所では、「祈りの感情をいざなう」静謐な景色をつくることを目標とした。 整備後の広場では、緑を背景に照らし出された祈念像に向かって、足元に埋め込まれた光の粒が輝く、鎮魂と祈念の感情を導くような祈りの景色が生まれた。

 公園内の平和の泉、原爆落下中心地、近隣の子供たちが通う山里小学校、平和祈念館の重厚感ある建物といった周辺施設も、地区全体で合わせて整備が行われ、静けさや祈りを思わせる佇まいとなっている。

講評:

 平和を祈念する場所である長崎の平和公園及びその周辺施設を一体的に整備する夜間景観整備のプロジェクト。全体的に照度を抑えた落ち着いた空間となっているが、平和公園では、祈りの先へと人々を導く路面の光ファイバー照明、細やかな光で制御された平和記念像、その背景となる樹木、と祈りをいざなう強弱のある光が丁寧に重ねられている。この場所が静かな祈りの空間であることを自然と光で感じることができる点が評価された。

(原田 武敏)

入賞:富山銀行本店

撮影:日建設計

受賞者:
江里口 宗麟(株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
上野 大輔(株式会社 日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ)
佐々木 泰和(株式会社 YAMAGIWA 東日本PDC)
作品関係者:
事業主:
中沖 雄(株式会社 富山銀行 取締役頭取)
建築設計:

塩田 哲也(株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
河辺 伸浩(株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
大西 由希子(株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
コンサルティング:

野村 芳和(株式会社 YAMAGIWA 中部支店)
清水 良一(株式会社 YAMAGIWA 金沢営業所)

作品コンセプト:

 『駅前空間に賑わいをもたらし、街の顔となるライトアップ』をコンセプトとした富山銀行新本店のファサード照明である。

 富山の自然や四季、高岡の伝統行事や文化からインスピレーションを受けた演出がプリセットされ、その内容とともに見上げる位置や角度によっても、その表情を豊かに変化させる。

 また、県と市と共に官民一体となって行った、約1年にも渡るデザインプロセスを通して、街の象徴となるライトアップを目指した。

講評:

 高岡駅前の賑わい創出に本ライトアップ計画が担った役割は大きく、かつ景観というデリケートな課題をクリアするため、施主、設計者、メーカーだけでなく行政も参加しOne Teamで取り組んだ好例といえる。このようなメディアファサードは、大型ビジョンや電飾サインとの区分けがよく論議されるが、本件は建築的特徴とよく調和し、環境装置としての位置付けをスケジュールやコンテンツの吟味によって貫いていることが大きく評価できる。

(岩井 達弥)

審査員特別賞:京都経済センター

撮影:株式会社エスエス大阪 左海 一郎

受賞者:
入江 俊介(大成建設 株式会社)
西崎 暢仁(大成建設 株式会社)
坂下 泰士(大成建設 株式会社)
作品関係者:
事業主:
野瀬 兼治郎(京都経済センタービル管理組合)
建築設計 :

内藤 多加志(大成建設 株式会社)
高岩 遊(大成建設 株式会社)
設備設計 :
根本 昌徳(大成建設 株式会社)

作品コンセプト:

京都の中心地である四条室町にふさわしい京都創生のシンボルを創出した。夏の訪れを告げる祇園祭の山鉾が建ち並び風情ある街へと変容するこの地に、柔らかでありながらも存在感を魅きたたせる「行灯」のような建築を目指した。京町屋の店先から漏れる灯りの温かさを創出する為、建築と設備を融合し具現化した。また色温度を山鉾の提灯と合わせることで、あたかも昔から建っていたような建築を目指した。

講評:

京都中心部の街角に建つこの施設の照明は、日常に限らず祇園祭に相応しい街並みを創出する。二つの通りに面した回遊バルコニー上部の軒を想起させる水平に配した木肌をほんのりと街中に浮かび上がらせ、祭期間中は四条通面の照明が行灯のように街を照らす。かつての連なる軒先が形成した整然とした水平基軸の街並みを、混沌とした現代にささやかではあれ確かに蘇らせており、京都の町や照明デザインの行方を照らすかのようである。

(原 直也)

2019年 照明デザイン賞 講評

総評

 応募総数は31作品。7名の審査員により一次、二次審査を経て11作品に絞り込み、応募者立会いの現地審査を経て最終審査委員会を行い、最優秀賞1作品、優秀賞3作品、入賞3作品、審査員特別賞1作品と、照明デザイン賞としてのレベルの高さを示す計8作品を決定した。受賞者は建築関係者、大学関係者、照明関係者と多岐にわたる。照明デザイン賞審査委員会では、より多くの人が気軽に応募できるよう、2020年に向けて要項の簡略化を検討中である。

(審査員長 近田 玲子)

最優秀賞:水木しげるロード

撮影:鈴木 文人

受賞者:
長町 志穂 (株式会社 LEM空間工房)
熊取谷 悠里 (株式会社 LEM空間工房)
作品関係者:
事業主:
中村 勝治(境港市長)
灘 英樹(境港市 建設部 次長 兼 水木しげるロードリニューアル推進課 課長)

設計関係者

土木設計:
栗原 裕(有限会社 ユー・プラネット)
システム設計:
伊藤 貴史(ウシオライティング 株式会社)
VR監修:
福田 知弘(大阪大学大学院工学研究科 准教授)

作品コンセプト:

 水木しげるロードは、公共道路空間の新たな魅力化と昼夜にわたる集客を期待するまちづくりとして、歩道拡幅整備と照明デザインによって実現したものである。
当該道路は1993年供用開始され、芸術的な妖怪ブロンズ彫刻のある町として人気を博してきたが、近年観光客も減り店舗は16時には閉店するような状況であった。そこで道路環境の改善とともに「日没後まで居たくなるまち」をめざし、照明効果によって「妖怪の気配を感じられる光のナイトミュージアム」としてリニューアルすることを照明デザインとして提案し採択された。約800mの歩道は、177体のブロンズ彫刻が再配置され「妖怪影絵」「音と光の演出」をはじめとする異なる照明手法と効果を公共照明としてとりいれた「光をめぐるまち」である。すべての照明は、全域でトータルに細かくプログラム制御し、この道に相応しいエンターテイメント性と深夜の省エネルギー、安全安心を同時に実現している。

講評:

 照明デザインの新たな可能性を切り開いたプロジェクトとして、際立った評価で最優秀賞に選ばれた。
JR境港駅から約800mにわたり、地元出身の漫画家水木しげる氏の創出した177体の妖怪ブロンズ像が並ぶ「水木しげるロード」が、25年目のリニューアルで、光の妖怪が出現する街路へと生まれ変わった。ブロンズ像への照明に加え、雰囲気を変えるカラーライティング、ゴボプロジェクターで路面に投影される妖怪たちの姿、そしてその気配を感じさせる街路灯や店先照明の変化や動きなどの緻密な照明制御が、効果的な音響と相まって、あたかも妖怪が住んでいるかのような街路を創り出した。
通常このような計画は、短期イベントでも道路照明や景観照明の規制や基準、あるいは様々な意見に阻まれることが多い。しかし、これら多くの課題を照明デザイナーと熱意ある行政担当者や住民が一致協力して解決し、常設の施設として成立させた本件は、照明デザインの歴史に足跡を残す意義のあるプロジェクトといえるだろう。

(岩井 達弥)

優秀賞:三越日本橋本店本館

撮影:鈴木 文人

受賞者:
山本 幹根 (株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
岩田 昌大 (株式会社 ライティングプランナーズアソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
株式会社 三越伊勢丹
建築設計:
隈研吾建築都市設計事務所
施工:
株式会社 三越伊勢丹プロパティ・デザイン

作品コンセプト:

 国の重要文化財に指定された日本橋三越本店、本館1階の改修計画である。
歴史的な建物を保存しながら、「白く輝く森」という建築デザインのコンセプトのもと照明計画を行った。
アール・デコ様式を用いた現代的な樹冠はフロア全体に展開され、美しいグラデーションの光で空間に明るさ感を与え、おもてなしの場を演出している。各入口には、お出迎えの為の特別な天井が設けられ、光に包まれる象徴的な場となっている。

講評:

 重要文化財に指定された百貨店の改装計画である。コンセプトは極めて明快。柱上部にアルミの葉状樹冠を取り付け、一枚一枚の葉に間接照明を仕込んで「白く輝く森」を創出する―ということだ。実現にあたってデザイナーは、設計シミュレーションや原寸モックアップで検証を重ね、光源選定、反射面角度、照明位置、器具交換の可否の検証など、ミリ単位でディテールの作り込みを行った。結果として、全く独創的で未来的な光空間を現出させ、大正初期、竣工当時の市民に感じさせたであろう百貨店本来の「晴れがましさ」までも現代に再現することに成功した。光のガイドラインによるテナント空間の光制御や、防災設備等とのデザイン上の折り合いのつけ方も含め、照明デザイナーのプロフェッショナルな関与は大いに評価されるべきで、「白く輝く森」に江戸以来の伝統と未来を二つながらに感じさせ、ある種の気品をもたらせたのも、こうした繊細な職人芸の賜物だろう。

(植野 糾)

優秀賞:慶應義塾大学病院1号館(新病院棟)

撮影:日暮 雄一

受賞者:
戸恒 浩人 (有限会社 シリウスライティングオフィス)
斎藤 俊一郎 (株式会社 竹中工務店)
作品関係者:
事業主:
慶應義塾
建築設計:
江波戸 宏(株式会社 竹中工務店)
近藤 朋也(株式会社 竹中工務店)

作品コンセプト:

 東京・信濃町にある慶應義塾大学病院の新病院棟。「Keio Forest」をテーマに、随所に杜のモチーフをちりばめた柔らかな光環境をデザインしている。主動線であるホスピタルモールでは、遠くまで伸びる枝のように天井間接照明を計画。そこに接続する待合・ラウンジ空間においては、天井に複数の葉形のダウンライトを軽やかに舞わせ、滞在する人々の心を優しく包む。2階エントランスの光のパーゴラや、木立の重なりが、杜の中を散歩しているような心癒される光環境を実現している。

講評:

 大学病院に建設された新病院棟の照明デザインで、建築設計と照明デザインが一体となって非常に居心地の良い空間が作り出されている。木立・枝・葉・杜のコンセプトは、わかりやすく幅広い訴求力を持つ一方で具象的過ぎる印象を与えかねないが、実際に出来上がった空間では、それらのデザインが前面に出すぎて目立ちすぎるようなことはなく、照明デザインは空間の質・居心地の良さ・ひそやかな視覚的楽しさをもたらすことにひたすら寄与している。病院建築の照明ということもあり、比較的大人しいデザインではあるが、一見控えめながらも細部までこだわりを持って練られている。葉形ダウンライトも単純な仕組みでありながら、視覚的効果は綿密に計算されている。全体としてバランス感覚が素晴らしく照明デザイン賞に相応しい作品となっている。病院建築における今後の照明デザインの一つの方向性を示すものとしても価値ある作品であると評価されよう。

(吉澤 望)

優秀賞:京都 神楽岡 蓮月荘

撮影:堀内 広治

受賞者:
竹内 跡 (株式会社 日建設計 設計部門 設計グループ)
熱田 友加里 (コイズミ照明 株式会社 LCR)
中村 公洋 (株式会社 日建設計 ソリューショングループ)
作品関係者:
事業主:
中山 哲也(トラスコ中山 株式会社 代表取締役社長)
設備設計:
小林 護(株式会社 日建設計 エンジニアリング部門 設備設計グループ)
照明設計:
松本 慎二郎(コイズミ照明 株式会社 特機商品部 製作室)

作品コンセプト:

 京都市左京区のゲストハウス兼保養施設。外観は存在感を保ちながら住宅街の静けさに溶け込み、内部は大文字山を望む東側の開口部が自然を最大限に取り込む。素材は左官や焼杉板を使用し、日本建築らしさや職人の手仕事を伝える。照明は光によって「空間を広げる」をコンセプトに計画。光の「面」をつくることで、空間に奥行き感や多面性を持たせた。和紙をアクリルに封入する技術で導光板照明と行燈を開発し、伝統と最新技術の融合を実現した。

講評:

 この建物は、京都・哲学の道にほど近い静かな住宅地に建てられた客室5室の宿泊保養施設である。目を引くのは、凹凸のある石壁、焼杉板や左官仕上げの壁など、建物各所を形作っている素材へのこだわりと、それらを生かした光である。建物全体を通しての照明デザインの基本は「光の面を作る」こと、光によって空間に奥行き感や多面性を持たせることであった。大文字山を望むダイニング・ラウンジや客室、2つの大浴場では間接照明で天井を浮かせ、4つの庭では素材と光の絶妙なバランス、京都らしい伝統と格式を見ることが出来た。眩しさがなく辺りを柔らかく照らす光が訪れる人を迎える。随所に見られる光を取り込んだアートワークの中でも、手作業で透明アクリルの中に白い和紙が蓮の葉のように浮かぶ形を作り上げた行燈が印象的であった。建築設計者が望む空間が、光によって余すところなく表現されている。

(近田 玲子)

入賞:東京大学総合図書館

受賞者:
川添 善行 (東京大学 生産技術研究所)
中澤 公彦 (清水建設 株式会社 設計本部 設備設計部4部)
赤羽 元英 (パナソニック 株式会社 エコソリューションズ社)
作品関係者:
事業主:
国立大学法人 東京大学
設計・監修:
東京大学キャンパス計画室(野城 智也)・同施設部
建築設計:
稲場 万鎖夫(清水建設株式会社 設計本部 教育・文化施設設計部)

作品コンセプト:

 関東大震災の記憶を継承する噴水を、地下空間であるライブラリープラザへ光を導入するトップライトに生まれ変わらせた。周辺の外構計画では関東大震災で焼失した旧図書館のレンガ基礎に照明を組み合わせ、キャンパスの憩いの場所としている。地下空間のライブラリープラザは、噴水トップライトからの自然光により、地下でありながら四季を感じられる空間が完成した。噴水トップライトからの自然光を補うかたちで、木格子の天井全体が照明となって、器具・グレアを感じさせない人にやさしいデザインとした。

講評:

 このプロジェクトでは光のデザインが建築設計の核心的役割を果たしていることが評価された。関東大震災で焼失した旧図書館の噴水をトップライトとして蘇らせる。広場に人を集める為に、周囲の建築からの漏れ光や遺構ベンチの間接照明だけで外構をまとめる。地下のライブラリープラザも、天井一面を覆う木格子ルーバからの光で、大きな照明器具の中に身を委ねるような気配を漂わせる。
設計者の強いデザイン意図が結実している。

(面出 薫)

入賞:香月メディカルビル

撮影:黒住 直臣

受賞者:
林 総一郎 (株式会社 三菱地所設計)
作品関係者:
事業主:
香月 孝史(医療法人社団秋月会香月産婦人科)
建築設計:
杉本 宏之(株式会社 三菱地所設計)
荒井 拓州(株式会社 三菱地所設計)
電気設計:
伊藤 匡貴(株式会社 三菱地所設計)

作品コンセプト:

 広島市内の築17年のオフィスビルをコンバージョンし、出産・子育てを行う女性とその家族を総合的にサポートする都市型複合医療施設に再生した。祝祭の場に相応しい華やかで輝くようなReデザインを施し上質で洗練された空間へと昇華させている。三層に分節された各々の外装にライティング演出を行って建物に奥行き感を生み出し、母親が我が子を包み込むように全体を優しい光のベールで包み込んだ。地元広島カープが勝利した夜には赤く輝き地域文化を体現する。

講評:

 築17年の事務所ビルを産婦人科、乳幼児医療保育施設に用途変更した建物。外観意匠で魅せる候補物件が複数あった中で、ガラス、金属仕様外観への照明企画が地域景観に貢献した点に加え、医療施設としての安心感、清潔感のあるアイボリー調内装に相応しい間接光の取り入れ工夫、視線方向に配慮した防眩器具による視覚に優しい照明計画、屋上庭園の開放感に満ちたヒーリング効果のある利用者優位の照明デザインが総合的に評価された。

(水馬 弘策)

入賞:熊本県医師会館

撮影:平井 広行

受賞者:
今村 雅樹 (日本大学/今村雅樹アーキテクツ)
石黒 竜夫 (伊藤喜三郎建築研究所)
井谷 博行 (山田照明 株式会社)
作品関係者:
事業主:
公益社団法人 熊本県医師会
建築設計:
伊藤喜三郎建築研究所・今村雅樹アーキテクツ設計JV
構造設計:
TIS & Partners
照明設計:
設楽 義行(山田照明 株式会社)
中村 大輔(山田照明 株式会社)

作品コンセプト:

 この建築は医師会の新しい理念「開かれた医師会」として、新社会の拠点となるべく設計された。
熊本城に面するお堀遊歩道側と反対の電車通りに面する両通りを、1階「パサージュ」で結びシンボル的空間とし、2階「300人ホール」へと繋がるパブリック空間を計画している。熊本大震災復興を願って現場制作した天井画「雲雀」や旧会館の「めがね椅子(坂倉準三デザイン)」43脚を再生し、多くの人に利用されるよう「光環境によるうつろい」をエレメントとして設計された。

講評:

 北側に復興中の熊本城、南側を電車通りに挟まれた最高のロケーションに建っている。光によるウェイファインデングの効果でスキップフロアの構成が分かりやすい。ロビーはガラス張りで透明感に溢れ、ホールの光幕照明も美しい。建築外観は穴の空いたパンチングパネルで構成され、夜間に暗くなるオフィスビルエリアに建物から漏れる光で優しく通りが照らされている。歴史都市熊本に新しい夜間景観を寄与したことが高く評価された。

(松下 美紀)

審査員特別賞:山のセカンドハウス

撮影:井上 玄

受賞者:
久保 隆文 (株式会社Mantle)
井上 玄 (株式会社 GEN INOUE)
宇谷 淳 (株式会社 GEN INOUE)
作品関係者:
施工 :
春田 勝盛(テクノアート)

作品コンセプト:

 山の中に立てられたセカンドハウス。7つの短冊状に分けられた空間ではベッドやソファなどの固定的な家具は置かず、素材やプロポーションに変化をもたせ空間の質に差異を演出している。
使う人がアクティビティや気分によって移動し、居場所を選ぶように、空間との関わり合いを誘発する事を目的としている。大きな窓が特徴的な空間において、屋外が真っ暗になることを効果的に利用し、窓に映りこむ光をデザインした。
多様に映りこむ光環境を楽しめるような自由な空間となっている。

講評:

 セカンドハウスと言うより家族のための自己啓発道場のような環境だった。人家の少ない村の斜面地を利用して7つに分節されたウエハースのような建築空間だ。家族がそれぞれに勝手な時間を楽しむために作られたそうだ。
光の設計もその意図を反映して7種類の異なる性質を持たせている。明るい部屋と暗い部屋。上からの光や下からの光。陰翳の濃い空間と均一に照らされた空間。まるで光の実験道場のようにも思えて楽しそうだった。

(面出 薫)

2018年 照明デザイン賞 講評

総評

 2018年度の応募総数は58作品であった。第1回審査会で現地審査対象を10作品に絞り込み、続く現地審査では、1作品につき2名の審査員がそれぞれ現地に赴いて作品を検証すると同時に、設計者から建築や照明デザインの説明を受けた。第2回審査会では、現地審査に行った審査員からの報告を踏まえて、7名の審査員が投票を行った。議論の結果、最優秀賞は該当なし、優秀賞4作品、入賞3作品、審査員特別賞1作品を選出した。

(審査員長 近田 玲子)

優秀賞:星のや東京

撮影:ナカサアンドパートナーズ

受賞者:
林 総一郎 (株式会社 三菱地所設計)
東  利恵 (有限会社 東環境建築研究所)
武石 正宣 (有限会社 ICE 都市環境照明研究所)
作品関係者:
事業主:
三菱地所 株式会社
運営者:
星野リゾート
建築設計:
清水 聡 (株式会社 三菱地所設計)
石田 雅大(株式会社 三菱地所設計)
宿利 隆 (株式会社 三菱地所設計)
電気設計:
岩井 厚 (株式会社 三菱地所設計)

作品コンセプト:

 星のや東京は日本旅館である。江戸小紋のスクリーンで覆い、重箱のようなデザインとした。玄関から客室までを畳敷きとし、各階にお茶の間ラウンジを設え、日本のくつろぎを表現した。
照明計画では「塔の日本旅館」にあるべき光環境として、見え隠れする奥ゆかしさ、徹底した眩しさの排除を念頭に計画した。
意図的に分節し明暗を生む間接照明、丁寧に遮光して間接照明化された意匠器具など実験的な手法も織り交ぜ、日本的な静謐さをたたえる空間となった。

講評:

 超高層ビルが立ち並ぶ東京大手町に、ホテルではなく「日本旅館」を作ることをテーマとした極めつけの星のやが誕生した。ホテルと旅館の違いは明確だ。室内で靴を脱がせるのが旅館。お迎え空間から広大な畳が待っていた。
照明デザイン上のコンセプトは日本特有の「間」や「陰翳」の美しさを際立たせることだと説明された。なるほど廊下の障子でさえ均一な明るさでなく美しいグラデーションを見せる。客室の欄間風な間接照明にいたっても、わざと光を繋げずに間隔をあけて陰翳を演出している。しかしこれは一見して球切れに見えはしないかと私は心配した。
「光を間引く」という考えで光の総量をおさえることに腐心したと言う。そのアイデアはアルミダイキャストで覆われた個性的な外観の照明にも表れている。特徴的な光の水平ラインを敢えて分断することで強い陰影の意識を表現している。
随所に挑戦的な照明デザインが見られ意欲的な思いの強さが伝わる仕事である。

(面出 薫)

優秀賞:近畿大学ACADEMIC THEATER

撮影:金子俊男

受賞者:
戸恒 浩人 (有限会社 シリウスライティングオフィス)
畠山 文聡 (株式会社 NTTファシリティーズ)
作品関係者:
照明デザイン:
小林 周平(有限会社 シリウスライティングオフィス)
遠矢 亜美(有限会社 シリウスライティングオフィス)
建築設計:
岡 俊徳(株式会社 NTTファシリティーズ)
伊藤 裕也(株式会社 NTTファシリティーズ)
設備設計:
竹林 雄司(株式会社 NTTファシリティーズ)

作品コンセプト:

 知的好奇心を揺り動かす「知の実験劇場」をコンセプトとした、近畿大学東大阪キャンパスアカデミックシアターの計画。各棟が独自の外観と内部空間を有する5つの建築群によって構成されており、それぞれの空間デザインのコンセプトを光で浮かび上がらせている。なかでも、四隅に建つ4棟をつなぐ中央の図書空間は都市のような複雑な様相を特徴としているため、光によって散策したくなるような期待感に満ちた雰囲気を創出した。

講評:

 図書館を中心として学生の学びや交流の場を作り出すことを狙った斬新な建物であり、そのコンセプトに沿った新たな照明デザインのあり方を示した作品である。特に平面計画に則った内部空間の天井の三日月型の建築照明は非常に緻密にデザインされており、一筆書きで光をペイントしたかのような美しい効果をもたらしている。オーガンジーの布を用いた天井照明は布に対して法線方向から見ると最も効果的で、場所によっては風にそよいで雲が漂うような印象を与えていた。木質ファサードを照らしあげた外観照明は松明の連なりのような見えとなっており、柔らかく斬新なイメージを建物全体にもたらすことに成功している。大学キャンパス内の照明計画としてこれまでにない大胆な光の効果をもたらしている点が高く評価された。

(吉澤 望)

優秀賞:GINZA SIX

撮影:金子俊男

受賞者:
村岡 桃子 (ライティング プランナーズ アソシエーツ)
木村 光 (ライティング プランナーズ アソシエーツ)
本多 由実 (ライティング プランナーズ アソシエーツ)
作品関係者:
建築主:
銀座六丁目10地区市街地再開発組合
設計プロジェクトマネージャー:
森ビル/アール・アイ・エー
基本計画・基本設計:
谷口建築設計研究所
実施設計・監理:
銀座六丁目地区市街地再開発計画設計共同体
(谷口建築設計研究所, KAJIMA DESIGN)
ランドスケープ:
プレイスメディア

作品コンセプト:

 115mの街区を貫くひさしの層に映り込む街のアクティビティと、そこに組み込まれた抑制のきいた光のライン。 低層商業階ファサードの“のれん”には照明ガイドラインを示し、各ブランドにはそのルールの中で個性を発揮してもらう計画とした。大規模開発における建築ファサード照明計画として、周囲との調和や影響について仔細な検討を重ねた。屋上庭園では、周辺夜景を楽しめるように低照度・低位置に照明を配置した。

講評:

 銀座の新たな名所としてオープンしたGINZA SIXは、銀座通りファサードでブランドを主張するアクティブな光と、都市の光の喧騒を映すパッシブな光を積層することで、現代社会の縮図のような、これまでにない新しい銀座の光の顔をつくりだしている。
さらに建築に覆われたあずま通りでは明るさの創出、大きな建築の裏となった三原通り側のファサードには色彩の光による賑わい、そして屋上庭園には陰影のあるやすらぎの光と、適光適所に都市が求める光を巧みにデザインしたことが高く評価された。

(岩井 達弥)

優秀賞:西南学院大学図書館

撮影:Kozo Okawa

受賞者:
松下 美紀 (株式会社 松下美紀照明設計事務所)
高山 直樹 (株式会社 松下美紀照明設計事務所)
作品関係者:
事業主:
G.W.バークレー(学校法人 西南学院大学)
建築設計:
飛永 直樹(株式会社 佐藤総合計画 九州事務所)
篠原 正樹(株式会社 佐藤総合計画 九州事務所)

作品コンセプト:

 福岡市の文教拠点に位置する西南学院大学図書館は「西南の知の樹」として建築の中心に知識の幹の「ブックツリー」があり、周囲は成長する枝葉としての「ラーニングリーフ」という空間が幹を支える樹木のような構成になっている。建築の意図を表現するために 照明コンセプトを「知をひらく光」とし、建築と一体化した光空間を創出した。外観はトレサリー(レンガ透かし積み)から内部の光が外へ漏れることで、まるでレースのような柔らかな表情を生みだしている。

講評:

 福岡西新地区の文教拠点にある大学の新しいシンボルとも言える図書館である。隣接するヴォーリス設計の大学博物館と同色のレンガ・トレサリー(透かし窓)の外壁は、昼は自然光を柔らかく取り込む照度制御の役割を果たし、夜は内部の光を効果的に見せてヴェールを纏った貴婦人のような夜景観の創出に成功している。照明デザインの基本は、最小の光で最大の効果を生み出す「ラーニングフリー」としている。書架スペースでは、本棚の上部に取り付けた上下配光の特注器具で、ボールト天井へのアッパーライトと上から下まで十分に明るく照らす書架照明を実現させた。加えて、人感センサーを細かく取り付け、省エネにも配慮している。建物中央の6階吹き抜け空間「ブックツリー」では、吹き抜け周りの書架用ウォールウォッシャー以外の照明器具を設置せずに、吹き抜け中央にある階段の照度を確保するなど、緻密な計算に基づいた光のデザインが評価された。

(近田玲子)

入賞:能作新社屋

撮影:金子俊男

受賞者:
戸恒 浩人 (有限会社 シリウスライティングオフィス)
遠矢 亜美 (有限会社 シリウスライティングオフィス)
作品関係者:
施主:
株式会社 能作
建築設計:
株式会社アーキヴィジョン広谷スタジオ
家具設計:
Koizumi Studio
プロジェクトプロデュース:
株式会社 t.c.k.w
サインデザイン:
水野図案室 合同会社

作品コンセプト:

 富山県高岡市にある、鋳物の製造・販売を行う能作の工場とショールームを兼ねた新社屋。ショップ、カフェがあるホールでは、緻密なCGシミュレーションにより決められたアップライト手法によってダイナミックに傾斜したルーバー天井を広く美しく照らし出している。
また、職人が鋳物を作る過程を来場者が見学できる仕上場では、職人の作業のための光と、来場者のための演出的な光を両立させたデザインとしている。

講評:

 話題となった錫製品姿をメタファーとする直線光源で構成された工場照明は、LED光源による新しい機能照明可能性を示唆していると評価した。また、ショップ・カフェエリアの照明に於いては、壁面一部に設えられた金属素材意匠壁に対して、金属という光沢、鏡面性を伴う素材を冷静に解析した上で直接的な投光を排除し、周囲インテリア輝度をほのかに映し出すという意匠壁演出手法を選んだところに、照明設計者の緻密さを感じる作品であった。

(水馬 弘策)

入賞:大光電機 株式会社 技術研究所

撮影:稲住写真工房

受賞者:
安東 克幸様 (大光電機 株式会社)
川中 祐介様 (大光電機 株式会社)
東井 嘉信様 (株式会社 大林組)
作品関係者:
事業主:
大光電機 株式会社
建築設計:
西森 史裕(株式会社 大林組)
設備設計:
松村 圭悟(株式会社 大林組)

作品コンセプト:

 本施設は、照明器具の製品開発、研究を担う施設として建設。「建築」「自然光」「照明」の一体化を目指し、 すべては「光」を最優先に考えた設計を行っている。特にエントランスホールの巨大な壁面に設置した「ヒカリタイル」は 来訪者を迎える「DAIKOのあかり」を象徴し、廊下や執務スペースで使用しているライン照明は、1つのモジュールで 10種類の器具に展開し、各エリアの用途に応じた照明手法と意匠性の統一を図っている。

講評:

 分散していた研究機能をひとつにまとめ、最新試験設備を導入し品質管理向上を目的とした照明メーカーの技術研究所である。エントランスホールでは3396個の光タイルが様々なシーンを演出し、お客様を迎える光として効果を高めている。執務空間は計画された配光設計により心地良くストレスを全く感じない。社員がタスクライトを点けると、そのゾーンの空調や換気が稼働する連動制御のオフィス照明を導入するなど、可能性への取り組みが高く評価された。

(松下美紀)

入賞:静岡県富士山世界遺産センター

撮影:金子俊男

受賞者:
窪田 麻里 (ライティング プランナーズ アソシエーツ)
矢野 基世 (ライティング プランナーズ アソシエーツ)
本多 由実 (ライティング プランナーズ アソシエーツ)
作品関係者:
事業主:
静岡県
建築設計:
坂茂建築設計
構造・設備:
Arup
ランドスケープ:
オンサイト計画設計事務所
展示:
丹青社
サイン:
日本デザインセンター

作品コンセプト:

 ユネスコ世界文化遺産に登録された富士山の、文化発信・研究拠点となる施設である。木格子に覆われた逆さ富士型の展示棟を照らし上げ、山頂に光が積もる富士山型が水盤に映り込む。刻々と表情を変える富士山のように季節ごとの演出を設定している。富士山への眺望や近隣住宅に配慮して、低い位置の外構照明のみとした。屋内では木格子の壁面を照らして素材感立体感を引き立たせるとともにアトリウムの明るさ感を担保している。

講評:

 水盤に映り込んだ木格子の「逆さ富士」は、隣の浅間神社の赤い大鳥居と奥に聳える「富士山」も取り込んで、ありふれたロードサイドを一変させた。照明の力で夜の景観はさらに魅力的だ。ガラスを挟んで屋内外の木格子のライトアップを連続させるという、極めてシンプルで骨太なコンセプト、そしてその実現のための水中照明の実験や床面LEDのグレア対策など、丁寧なディテールや誠実な技術力に、高い評価が与えられた。

(植野糾)

審査員特別賞:越後妻有文化ホール・十日町市中央公民館~段十ろう~

撮影:村上美都

受賞者:
鈴木 教久 (株式会社 梓設計)
加藤 洋平 (株式会社 梓設計)
髙橋 匡太 (株式会社 髙橋匡太)
作品関係者:
事業主:
十日町市長 関口 芳史
電気設計:
齋藤 禎二(株式会社 梓設計・電気システム部)
建築設計:
桾澤 忍(株式会社 塚田設計事務所)
アートコーディネート:
飛田洋二(株式会社 アートフロントギャラリー)
アート照明設計支援:
井出 英典(カラーキネティクス・ジャパン 株式会社)
アート照明プログラム:
川口 怜子(株式会社 髙橋匡太)

作品コンセプト:

 ホールと公民館の複合施設である。最高の舞台芸術を鑑賞できると共に、市民の多様な文化活動が行える。ここでは、日本人の伝統的な世界観の一つである「ハレとケ」を大切にした空間としたかった。そのため、ハレとケの空間を光で際立たせている。祝祭性のあるホールの内壁は木仕上げ、ホール外側の壁は本実型枠仕上げとし、地元産の木を反転した仕上げの関係でハレとケを表現している。また、イベント時には、雁木ギャラリーの光の演出「光り織」により、夕刻になれば建物の表情は、十日町着物を纏うよう一変する。

講評:

 里山の暮らしに現代アートを定着させた「大地の芸術祭」で知られる十日町市の文化拠点ホールである。大通りから奥に入り込んだ敷地を顕在化させるため作られた100mを超える雁木ギャラリーの天井に、十日町市の伝統織物、明石ちぢみや十日町友禅の縞模様と色をモチーフにした「光り織」が組み込まれた。月ごとに変わる光の色は市民生活に生気を吹き込む。白一色の長い冬の間も人々の活動を刺激する景観照明として評価された。

(近田 玲子)

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