1931年に竣工した旧十八銀行諫早支店の建物を改修・増築により活用した事務所・店舗である。地域のシンボルである建物の「保存」「復元」を目標にし、更に「新しさ」という付加価値を加えて市民に親しまれる建築が目指された。
銀行の店舗部分は、「保存」をするために内装・外装を損なわない構造補強を施し、格子天井や丸柱についても補修と塗装が行われた。そこに1931年の竣工当時にあったシャンデリアや柱・壁のブラケット照明の形状・サイズを当時の写真から割り出して製作し「復元」を行った。一方で1980年に増築された部分は柱・梁・スラブを残したスケルトン化によるフルリノベーションを行い、ガラスやパネルなどで店舗部分と対比する「新しさ」を感じられるデザインとしている。
外装では出入口のブラケット照明の復元だけでなく柱型にアッパー照明を追加することで、古さと「新しさ」の融合を図っている。
改修工事ではあるが環境配慮・社会貢献への取り組みとしてZEB Readyを実現し、BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)の第三者認証を取得している。
写真から1931年当時の照明器具の形状やサイズを割り出し、意欲的に照明器具の復元を行っており、歴史的建築物の魅力と価値を最大限に引き出している点が高く評価される。