阿蘇カルデラ・南郷谷を臨む、南阿蘇鉄道の終着駅である。熊本地震の被災により再建され、線路側を正面に、広いプラットホームと芝生広場を持つ。地形的にプラットホームと市街地がつながり、改札口がないため誰でもアクセスできる特徴がある。また、駅舎は西に沈む夕日を眺めることができる方角に向けられている。この独自の配置は、駅舎の配置計画と交通計画を一体化した「グランドデザイン」によって実現された。
駅舎は駅舎と交流施設の2棟に分かれ、庇、回廊、塔で繋がれている。木組みの「修羅組み」が天井を支え、各部分で木組みの形を変えることで、異なる機能と美しさを持たせている。周囲にはガラスの垂れ壁が設けられ、夕日の反射や退色対策が施されている。交通の乗り換えがスムーズに行えるように設計され、同時に風景を楽しむためのベンチが配置されている。特に阿蘇山を右手に眺め、熊本平野に続く阿蘇カルデラ・南郷谷の地形を望む西側に夕焼けが広がる風景をどこからも感じられるように計画されている。夕景を観光資源とすることでナイトタイムエコノミーに結びつき地域活性に繋がっている。
夕焼け時の限られた時間を最優先に考えた大胆な照明計画が特徴的である。災害対応、防犯性、誘導性能など多面的な価値が付与された施設を実現しており、将来的な維持管理への配慮もある。駅舎のフラクタル構造や周辺の風景を引き立てる照明デザインが素晴らしい。