社会課題の解決を通してイノベーションを創出すると共に地域共創を推進するソーシャルコネクティッドキャンパス構想を具現化した新しい学び舎である。2015年に開設された大阪いばらきキャンパスは敷地を取り囲む塀や門がなく、多様な人々が集う地域社会に開かれている特徴がある。
情報理工学部・研究科と映像学部・研究科の移転に伴い新設されたH棟は、既存キャンパスの特徴をさらに進化させ、学外の方も利用可能な共創空間を1階部分に配置し、ヒト・モノ・コトがより触発しあうキャンパスが目指された。実証実験の場 「TRYFIELD」という施設コンセプトに基づき、 あらゆる人々の「やってみたい」という気持ちを刺激し挑戦を後押しする実証実験の場を実現するため、特徴的な複数の学習空間で構成されている。
低層階の半屋外のイベントスペースTRYSQUARE (学生×地域住民×企業が集まる祝祭性をもった大空間)と高層階の階段状に連続する吹抜けオープンスペースInnovation Lounge (学生×学生の親密なコミュニケーションを促す小空間)を中心に、多様なプレイヤーが混ざりあい化学反応が起きるように、集まる人数や目的に応じて共用空間のスケールや設えに変化がもたらされている。
開放的なキャンパス空間と地域の公共性を照明デザインで巧みに表現している。統一された色温度とグレアレス器具、調光制御で視環境の快適性を高めている点が評価できる。オープンスペースの概念を光環境として適切に表現し、実用性と演出性をバランスよく融合した計画として評価したい。