株式会社カネカ高砂工業所内における小さな森に隣接する2階建ての事務所棟である。カネカの独自技術「OLED(有機EL)照明」が生み出す柔らかい光環境を活かし、ウェルネスオフィスの実現を目指している。
OLED照明は面発光し、対象物を柔らかく包み込んで空間全体をやさしく照らすことが可能である。ブルーライトが少なく拡散性が高いため、LED照明に比べて眩しさや手元の影が少なく、目の負担を軽減し、集中力の持続を促す等、オフィスワーカーにとって最適な光環境を提供する照明である。OLED照明をオフィスベース照明として日本で初めて実装した次世代オフィスの先駆けとして、働きながらOLED照明による光環境の実証実験を行い、その効果を検証する。
また、OLEDの光をLEDに代わる次世代の光としてただ使用するのではなく、デザイン性を高め、様々な活用方法を見出しながらデザイン面・機能面ともにOLEDだからこそ可能となる様々な照明形態の可能性を探り、実践している。
OLED照明の薄さや面発光特性を巧みに生かし、次世代照明への挑戦を示した意欲的な計画である。特にグレアレスで均一性の高い視環境が実現され、オフィス空間における快適性は非常に優れている。OLEDの薄さ以外の特性や設備意匠においては、さらなる訴求や工夫が期待される。自社技術を積極的に活用した革新的な事例として高く評価したい。