JR大阪駅を内包する大阪ステーションシティの新たな駅ビルとして、高架橋の一部を解体し新築された計画である。JR大阪駅の新たな改札(うめきた地下口、西口改札)の供用開始を経て2024年夏にビルの開業を迎え、さらには同年秋の「グラングリーン大阪」の先行街開きを受けて、西へ拡張する大阪駅の玄関口と回遊拠点の役割を担っている。
鉄道軌道沿いの東西160mの細長い敷地形状に導かれた超スレンダーボリュームで、オフィスタワーである高層ボリュームの斜めに切り落としたビルシェイプは新しい街への楔(くさび)として、イノベーションを掲げるビルコンセプトの先進性を発信し、低層ボリュームの飲食店舗フロアは、水平に連続する建築意匠とライティングデザインによって内部の賑やかさと街の西への拡張性を表明している。
重厚な組積壁や反射率の高い素材と、「光演出・光効果」を駆使した照明デザインにより、変わりゆく大阪駅と街の風景、人々の意識や記憶を取り込み「時をまとう」駅ビルを目指し計画されている。
建物のゾーニングを色温度やカラーチェンジで巧みに表現し、駅ビルとしての象徴性を高めた点が評価できる。ルーバへの器具収納やガラス手摺への照明演出など、視覚環境への細かな配慮も優れている。フィン照明は演出効果の面で賛否が分かれるが、モックアップを通じて検証された壁面照明など、独創的で印象深い空間を実現している点を高く評価したい。