前身の神戸市立須磨海浜水族園の施設老朽化を受け、Park-PFI制度を活用して公園と一体的な再整備を行い、「神戸須磨シーワールド」として生まれ変わった水族館である。公園との一体感や松林保全に配慮した3棟構成として、展示を巡りながら周辺環境の魅力を体感できる開放的な建築となっている。3棟の屋根はいきものの躍動感を想起させる自由曲面で連なり、新しい街の風景をつくり出している。「『つながる』エデュテインメント水族館」をコンセプトに、西日本唯一のオルカ(シャチ)飼育施設として、海のいきものとのふれあいを通して楽しみながら学べる体験と、飼育生物の福祉を重視した施設を目指している。
オルカスタディアム・ドルフィンスタディアム・アクアライブの施設群からの光によるシナジー効果で印象深い夜間景観を演出している。水族館特有のパフォーマンス用照明や水槽展示照明は緻密な検討を行い、展示効果の最大化と飼育生物へのストレス軽減を図っている。また、展示効果を高めつつ環境性能の向上を行い、各種省エネルギー手法の採用によりアクアライブ棟で建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)ZEB Ready、全棟で建築環境総合性能評価システム(CASBEE)-建築 Sクラスの認証を取得している。
色温度を活用したイベント空間の演出や、生物育成環境を配慮した緻密な照明計画が高評価である。特に自然光に近い波長の採用や映り込み対策、狭角照明による生物負担の低減が優れている。構造美を強調するスタンド屋根の照明も良いが、建築特徴と照明演出とのさらなる連動が期待される。総じて環境配慮と省エネ性能が極めて高い計画であり、模範的な事例といえる。