2025年に開催する万博会場への最寄り駅として国内外約2,820万人の来場者を迎える主要な玄関口となる駅である。夢洲駅は夢洲の移り変わりとともに100年続く駅であり、今後の統合型リゾートやまちづくりに欠かせない施設でもある。このような未来に向けた駅であるため、これからの駅や交通の在り方の1つの表現として、交通手段だけではなく、目的地になるワクワクする空間を目指して建てられた。
訪れた人が物語を鑑賞できる劇場のように、動きや移動を体感でき、多様性や命の鼓動を感じられる場所を目指した駅舎となっている。日本文化に根差したデザインで構成された多彩なシーンによって人々が導かれ、訪れるたびに新たな発見がある「いきいきと動く駅」としてデザインされている。
『移世界劇場』 動く(いきる)=移動の魅力を発信する駅のデザインコンセプトを実現する空間演出手法として、「折り紙天井」、「鏡面・ゆらぎ」、「灯り」、「本物の素材」、「運用・演出」の5つを柱として「移世界劇場」の各シーンが創り出されている。
日本的なデザインを取り入れ、「移動」をテーマにした非日常的な空間演出が高く評価できる。特に地下空間では調光調色を用いてサーカディアンリズムを反映した時間の移ろいを巧みに表現している。照度確保と折り紙モチーフの複雑な天井との調和も見事で、公共空間としての明るさと演出性を両立させている。建築・サイネージとの融合やアルミ天井への光の反射を活かした多様な光表情など、細部にわたり完成度が高い。