将来のクルマに求められる性能、安全性をより高い水準で実現し、世界へ発信するための研究開発施設である。開発の拠点となる“車両開発棟”と協業や外部発信を行う“来客棟”の2棟で構成される。
外観は、アルミ型材をクロスさせ日射遮蔽の機能を持たせつつ企業のブランディングを表現した。内部は、建材として欠点がある間伐材に機能を持たせて森づくりへの貢献を目指した。車両展示空間では、ハイサイドライトの架構を、間伐材を束ねて構成し、木の香りと清涼な空気で満たした。ホールは、鳴龍現象を解消する「音響拡散壁」を、板材をビスや金物等を用いずに構成し、良質な音環境を実現した。
内部空間に、間伐材から得られた細い木材を構造材や壁材として多用していることが特徴的な建築である。木の建築架構や壁面を積極的に照らしあげることによって、木材の色・質感がよく感じられ、優しくて柔らかな印象の空間が演出されている。さらに、照明によって木空間の境界を明確にすることで、その空間が周囲から浮かび上がって見える。また、ライン照明が創出する「光の線」が空間に方向性や奥行きを与える仕掛けとなっている。