食品企業の新本社計画である。人と社会と環境を健康にするウェルネスカンパニーの実現拠点として、多様な生態系が共生する森のような環境を目指し、都市にありつつ自然のなかで様々な活動が創発する環境共創型オフィスを目指した。
あらゆる人が自分の好きな環境を見つけられるよう、デザインは森をテーマとし、企業理念の象徴として創業者出身地の杉材を使用し木立をイメージした凹凸のある木の空間に、光だまりや光を絞った場所など、森の中のような光のムラをあえてつくり、行為によって居場所を変えられる選択性をもったオフィス環境を実現した。
また人感センサやサーカディアンリズムに合わせた照度調整システム等により消費電力を低減すると共に、地域環境のゆらぎを感じる照明のシステムを構築した。外部センサで感知した風の強さに合わせ植栽を照らすスポット照明が動き風に吹かれるように植栽の影が揺れる「風のゆらぎ照明」、季節ごとの温度により色温度が変化する「温度のゆらぎ照明」を実装し、リアルタイムで自然のゆらぎを照明に変換して空間に重ねることで、地球環境と共生し内外で自然を感じることのできるオフィス・地域共創空間を作り上げている。
オフィス空間において自然の要素を積極的に取り入れ、5分ごとの風速をリアルタイムで計測し、光環境に「ゆらぎ」を取り入れるユニークな試みが評価できる。