ニコンが100年以上にわたり拠点を構え、様々な製品やサービスを生み出してきたゆかりの地に各部門を集約し、先進開発機能の強化やシナジー創出を図り、持続的な成長を実現する新本社である。外装は水平庇と彫りの深い横連窓、ライトシェルフにより水平ラインを積層し、光で未来を変えていくニコンの新本社に相応しい光の直進性を感じさせるデザインとなっている。
照明計画は、ニコンらしい光学的に考えられた“ニコンの光”を計画している。エントランスホールには、プリズムの形をモチーフにしたテラコッタタイルの光壁、エレベーターホールの天井にはレースカーテンの重なりをイメージした三軸織物のルーバを採用し、モアレ現象と照明の融合をデザインしている。
執務室エリアの天井はリブ付きPC床版あらわしのデザインで、断面はアーチ形状を採用し、その頂部に設けたスリットに幅25㎜と細くシャープなLEDライン照明器具をシームレスに設置することで、PC床版の意匠性をより引き立たせている。照明器具の発光部はアーチ天井面より下に配置することでアーチ状に柔らかい光が広がり、より天井が高く感じられる。机上面平均照度は調光時500lxを確保し、ムラのない均斉度の取れた照度分布により、働く場所を自由に選べるABWの働き方に適応した光環境となっている。
ABWに適したオフィス環境を整えながら、建築と照明の調和を図った優れた照明計画である。庇のライトアップや執務空間のアーチ型の照明により、機能性と美しさを両立し、「ニコンの光」という企業の哲学を空間全体に表現している。