既存の歯学部附属病院と連携しながら、より質の高い臨床教育・研究を実現し、歯学医療の教育環境向上を目的に新設したキャンパスである。計画敷地周辺は中低層の住宅群であり、月見坂という地名のとおり南北で最大10mもの高低差がある起伏に富んだ敷地環境である。臨床教育研究棟は、大学として必要な建物ボリュームを確保しつつ、ピロティ下空間を公開空地とした丘状の広場により地域住民に憩いの場と緑の潤いを提供している。広場は、誰もが日常的に通り抜けできるスロープを設けるなど地域に溶け込むつくりとし、テラスや階段状のベンチを点在させ多様な活動が生まれることが意図されている。緑あふれる丘状の広場を登りきると建物2階につながり、建物内外で生まれる活動風景が立体的に連続するよう計画された。3層吹抜に面して大小様々な「アクティブ・ラーニングスポット」を設けることで学生が互いに触発され、「学び合い」が生まれる環境を提供されている。また、月見坂テラスを介して附属病院と研究棟をスムーズにつなぎ、歯学医療教育の連携が強化される。月見坂テラスの食堂・カフェは地域一般の方にも開放され、緑の広場と合わせて多くの人々に親しまれる建築が目指されている。
新築の教育研究棟及びテラスと既存の附属病院との連続性を意識させる照明計画がなされている。また、教育研究棟のエクステリア及び内部空間では、柔らかな間接光を主体とした計画を積極的に用いることで、開放的あるいは近未来的な雰囲気が演出されている。