閑静な住宅街に建つ賃貸集合住宅である。都市部において高密度に積層された住環境にありながらも、入居者がストレスを感じることなく脱炭素ライフを実践できる次世代型の健康住宅として計画した。ロの字型の住棟に囲まれた中庭には光・風・緑を取り込む開放的な空間が広がり、防犯性やプライバシー性を高める立体緑道(フライングコリドー)を設けている。高断熱化による高い外皮性能や高効率設備システムの採用により快適性と環境性能を両立させ、非分譲大規模集合住宅としては国内初のNearly ZEH-Mの認証を取得。北向き住戸においても中庭側からの南面採光により明るい住空間を実現しており、玄関際に設けた専用換気口により住人の自然通風を促進するなど、パッシブな手法で非空調でも快適に過ごせる時間を最大化する計画となっている。
日中の中庭は、吹抜けを通して日光を取り込むことで、1階はしっとりと落ち着いた照度、上階へ行くほどに明るく開放的にグラデーショナルに空間の質が変化する。共用部の夜間の照明計画においては一貫して間接手法を採用し、落ち着いた住環境にふさわしい情景・空間を創出すると共に、最大限の省エネ性、低グレアで上質な視環境を構築することを目指した。
間接照明により住空間における共用エリアを非日常的かつ印象的な演出を行っている。また中庭の植生と自然光、ライトアップの有機的な組み合わせが美しく、周辺環境とも調和した、快適な住環境を実現している。閑静ながら渋谷区というファッションセンスある地域の賃貸という住環境に沿っている。