1回4~5時間、週3回の生涯続く透析治療が必要になった患者に対し、QOL向上のため、時間の移ろいや季節による変化を感じられる場を目指す透析クリニックである。地域にある蔵のイメージから、勾配を変化させた連続屋根にすることで、内部に様々な大きさ、高さの場所を与えて均一な空間にならないよう計画されている。自然採光と光の回り方の変化でも多様な空間を生み、患者の「場所の選択性」が付加価値となった。
また、多くの窓から、全てのベッドに自然光が届いているが、トップライトからの光は患者が眩しくないよう、全てのベッドに対する検証を行っている。天井の照明器具や吹出口がなくシンプルであるが、トップライトと光幕の間のベース照明やカウンター上部の間接照明で空間を照らし、明るさを確保している。
透析を行う病院であることから、継続的に何度も長時間を過ごす空間に対する配慮がなされている。華美な演出は避けつつ、昼光の移ろいは取り入れ、人工照明器具の存在感を許力排除しながら、陰気な印象になっていない点が評価できる。建物自体のボリュームが周辺の住宅地に馴染みながらも単調でなく、照明のコンセプトとも共通して、調和しつつも凡庸なものとなっていない点は素晴らしい。