第7回Lux Pacifica大会概要報告
Lux Pacifica委員会委員長
中村肇
1.はじめに
Lux Pacificaは主に環太平洋地域および環インド洋地域の国々の照明学会によって構成された、照明分野の研究・技術・デザインなどに関する交流を行うための国際組織である。現在では世界の人口の約半分をカバーしている。
Lux Pacificaの主な設立目的は、4年に一度国際会議を開催し、照明関連の研究者・技術者・照明デザイナーらが、一堂に会して成果を発表するとともに、討論、情報交換および国際交流を行う機会を提供することである。また、発展途上国が照明分野の団体を組織化する場合、情報提供などを通じてこれに対する支援を行なうことや、その国々のより良い照明環境形成、照明産業振興、照明教育の充実、照明技術の普及・向上に対する支援もこの目的に含まれる。
第1回大会が1989年に中国の上海市で開催されてからほぼ4年ごとにバンコク(1993年)、名古屋(1997年)、ニューデリー(2002年)、ケアンズ(2005年)、バンコク(2009年)の順に開催されてきた。今回、第7回大会が2013年3月6日から8日にかけて,タイのバンコクにあるImperial Queen's Park Hotelで開催されたので概要を報告する。
2.国際組織委員会の活動状況
Lux Pacifica大会の運営母体である国際組織委員会は議長国の呼びかけにより2年ごとに、つまりLux Pacifica大会と、その中間のCIE(国際照明委員会)大会のときに開催される。そのときには各国代表委員が一同に会し、大会の開催国・開催時期や国際組織委員会の運営方法などを決定する。
今回の国際組織委員会は大会一日目の3月6日午後に会場ホテルで開催された。今回出席した国際組織委員とオブザーバーのリストを表1に示す。
表1 Lux Pacifica 国際組織委員会出席者(2013年3月6日)
今回議論された主な内容を以下に列挙する。
(1) 大会の開催頻度(中間大会)
発展途上国の強い要望により、4年に1度開催される従来のLux Pacifica大会に加え、2015年に中間大会が開催されることになった。開催国はインド(またはスリランカ)である。場所や日程等の詳細は決まり次第、本ホームページと照明学会誌で報告する予定である。
(2) 加盟国
今回ベトナム照明協会の加盟が承認され、Lux Pacificaは11組織により構成されることになった(表1)。
(3) 第8回大会開催国
現在未定であり、今後Eメール会議にて議論する予定である。
3.大会実施状況
3.1 参加者・参加国
タイ照明協会から報告のあった参加者の内訳を表2に示す。このうち参加登録をした国別の人数を図1に示す。Lux Pacificaの加盟国以外の国も含めて、合計14ヶ国(地域)から85名が参加登録した。このうち日本からは同伴者を含めると36名であり、参加国の中で最も多く、大会の成功に大いに貢献した。
表2 参加者の内訳
分類 | 人数 |
---|---|
参加登録者 Participants registered * | 85 |
国際組織委員 Lux Pacifica Board Member | 9 |
協賛企業 Sponsors | 15 |
大学生聴講 Student in university | 30 |
タイ照明技術協会委員 Committee in TIEA | 18 |
招待講演者 Keynotes speakers | 3 |
合計 | 160 |
* 図1参照
図1 国別の参加登録者数
3.2 論文件数
図2に今回の大会の参加国別の論文件数(プロシーディングス調べ)を示す。全論文数は82件で、この中では、日本の30件が突出して多く、量的にはリーダーシップ的存在を担っている。これは日本の国際的知名度を向上するためにほぼ十分な数であったと思われる。
図2 国別の論文件数(プロシーディングス調べ)
3.3 口頭発表件数
図3に今回の口頭発表件数を、ポスター発表件数と併せて参加国別に示す。日本からはポスター発表の方が多かった。国際的な影響力向上のためには今後の口頭発表の充実が期待される。
図3 国別の口頭発表件件数(プログラム調べ)
3.4 大会プログラム
従来のLux Pacifica大会1)2)では会場としてホテルが使われており、今回もバンコクの主要部の一つで、高級住宅街としてよく知られているスクムウイット通りの近くにあるImperial Queen's Park Hotelが使われた(図4)。これは日本からのツアー客にもよく利用されている、バンコクでも有数のホテルである。
行事を行う各部屋は上記ホテルの2Fにあり、開会セレモニーにはQueen's Park 3という名前のボールルームが使われ、この入口近くに参加登録の受付デスクが設けられた。他にも口頭発表用に二つの部屋が、ポスター発表に一つの部屋が使われた。表3に3日間に及んだ大会プログラムの概要を示す。
図4 会場ホテル(Imperial Queen's Park Hotel)
表3 大会プログラム
大会一日目の3月6日には午後から参加登録が始まり、その後、討論形式のフォーラムと国際組織委員会が開催された。フォーラムはオーストラリア、日本、インド、タイから各一人、合計4人のパネリストが演壇に立ち司会者の進行に合わせて、デイスカッション形式で行われた。この際、聴衆も含めた質疑応答も行われた。この主たる目的は、加盟国の連携強化のために各国の照明分野の情報交換を行うことである。ライティング・デザインの進め方、照明学会と照明工業会の関係、照明教育、照明基準などが話題になった。なお、小職が日本からのパネリストを担当した。フォーラムの会場風景を図5に示す。
図5 フォーラムの会場風景
その後、夕方からウェルカム・セレモニーが同ホテルのプールサイドで立食パーティーの形式で、なごやかな雰囲気で行われた。
二日目には、午前9時から開会セレモニー(図6)がタイ照明協会のUtis Chanchenchop会長(図7)のウェルカム・スピーチで始まった。このセレモニーでは、司会者はスピーチを英語のみならず日本語でも行い、タイ側から日本人に格別な配慮がされていることを感じた。その後、Warren Julian委員長(図8)のオープニング・スピーチと二つの特別講演が行われた。
図6 ウェルカム・スピーチ
図7 タイ照明協会:Utis Chanchenchop会長
図8 Lux Pacifica国際組織委員会:Warren Julian委員長
午後は、Queen's Park 4とQueen's Park 5の2会場に分かれてセッションが始まった。各セッションの座長は、国際組織委員会の委員などが担当した。日本からは、Lux Pacifica委員会の高雄副委員長が二日目の午後にOthers related to lightingなどのセッションで座長を担当した。ポスター・セッションは隣の部屋(Queen's Park 6)で、昼食と休憩の時間を利用して行われた。口頭発表風景を図9に、ポスター発表会場風景を図10に示す。
図9 口頭発表風景
図10 ポスター発表会場風景
三日目は午前、午後ともセッションが開催され、終了後にフェアウェル・セレモニーが開催された。これは、チャオプラヤー川をバンド付きのにぎやかな船でクルーズするスタイルで、タイ料理を食べながらデッキから有名寺院などの景観照明を楽しんだ。
今回の大会ではタイの照明関連7社がスポンサーになっており、そのうちToshiba Lighting、Philips、TASA INDUSTRIAL、SAENGMITR GROUPの4社が商品展示会に参加した。これはセッション会場の前のスペースを利用して行われた(図11)。
図11 商品展示会
4.Lux Pacifica大会の変遷
表4に、今までのLux Pacifica大会の沿革・共催組織などを一覧表にして示す。さらに参加登録者数と発表件数の推移を図12に示す。ここで論文数を数字で表記しているが、過去3回の大会を見ると日本はほぼ4割以上を占めている。参加登録者数においても、日本の占める割合は相当高く、環太平洋地域・環インド洋地域の国々では、照明の学術・技術分野において、日本は最も活発な情報発信国であることがよく認知されるようになった。
表4 今までのLux Pacifica大会の概況
図12 参加登録者数と論文件数の推移
5.あとがき
Lux Pacifica大会で発表することは、特に若い研究者や技術者にとって国際的な仲間作りや情報入手、日本の研究・技術のPR力向上に役立ち、さらに海外への影響力を高めるための知識・経験を積むよい機会となる。また交流を深めることにより、将来の日本照明界の国境を越えた産業活動や研究活動における連携強化にも貢献できる。今後とも日本からの多くの参加を期待したい。
最後に、国際組織委員会のWarren Julian委員長ご夫妻の献身的なご尽力により、国際組織委員会が円滑に運営されていることに感謝の意を表す。本大会を成功裏に終了できたのは、Utis Chanchenchop会長を始めとするタイ照明協会の大会実行委員会の各委員の熱心な活動によるところが多い。特に大学などを中心にチームを組み、一致団結して開催をサポートしている姿が強く印象に残った。さらにはLux Pacifica委員会からの情報を信頼し、多くの日本人の方々が参加された。これらすべての関係各位に感謝の意を表す。
参考文献
(1)中村 肇:第5回Lux Pacifica大会概要報告、照明学会誌、89-12、pp.833-838(2005)
(2)中村 肇:第6回Lux Pacifica大会概要報告、照明学会誌、93-9、pp.701-708(2009)
(3)中村 肇:第7回Lux Pacifica大会概要報告、照明学会誌、97-8A、pp.451-457(2013)
(4)高雄元晴:第7回ルクスパシフィカ大会に参加して(発表状況)、照明学会誌、97-8A、pp.458-460(2013)
(5)中村 肇:ルクスパシフィカの現況報告、照明学会誌、87-6、pp.404-409(2008)
(6)成定康平・井上猛:LUX PACIFICA(環太平洋照明会議)第一回大会の概要、照明学会誌、73-11、pp.615-620(1989)
(7)塚原淳一:ルクスパシフィカの紹介、照明学会誌、78-4、pp.137-138(1994)
(8)河本康太郎:LUX PACIFICA’93(環太平洋照明会議・第2回大会)組織委員会の活動経過、照明学会誌、78-4、pp.139-141(1994)
(9)山家哲雄:LUX PACIFICA’97大会概要報告、照明学会誌、82-3、pp.218-224(1998)
(10)山家哲雄:環太平洋照明会議-LUX PACIFICA-、照明学会誌、86-3、pp.157-160(2002)
(11)山家哲雄:環境太平洋照明会議LUX PACIFICA2002・New Delhi大会報告、照明学会誌、87-6、pp.404-409(2003)
(12)石渡正紀ほか:環太平洋照明会議LUX PACIFICAにみる技術動向とあかり文化、照明学会誌、88-2、pp.97-105(2004)