2025年に100周年を迎える京都競馬場の記念事業として、1980年竣工のメインスタンドの全面改築、馬場全体の改造、厩舎地区も含めた施設全体の整備計画である。今回のスタンド計画ではレースが行われる馬場側のデザインは水平性を強調し、大きくはね出したヴォリューム構成とすることで、競馬場の大きさを利用したダイナミックでスピード感のある景観形成を目指している。一方で、まちと接続する背面のパドック側のデザインはできるだけヴォリュームを切る、ずらすことで分節化し、初代より受け継がれた曲線でデザインされた階段状の緑化テラスと、京都府産材を利用した木鋼ハイブリッド構造の大庇により、お客様をお迎えするヒューマンスケールの公園のような競馬場を目指している。内部空間でもトップライトや緑化、木材の利用により明るく潤いのある計画にするとともに、随所で京都らしさを感じられる繊細な表現を目指している。
建築との一体感、隅々に渡る細かな照明計画がすばらしい。屋内から漏れ出る光によって周辺環境に配慮した夜間景観を創出するとともに、内部においては京都らしさの演出を行っている。照明器具の統一化によるメンテナンスへの配慮とともに、照明器具の配置の違いにより異なるイメージを表現して、意匠から積極的な省エネルギー性向上への取り組みがなされている。「公園のような競馬場」という新たなパブリックスペースに相応しい光環境が随所において実現されている。