京都市岡崎エリア北東 東山を背景とする、真宗大谷派岡崎別院の隣地にホテルを新築する計画である。
寺院の前面景観となるファサード構成や、別院庭園を広げるようにデザインした日本庭園、ゲストにとって京都の伝統との接点となるような次世代の工芸作家との協業など、境内の一部に溶け込みながら、この場所ならではの景観とゲストの体験を目指した。
通りとの視線を制御する簾調の金属ルーバーは、ねじれ、ずれ、重ねの操作により、簾本来の自然素材のようなゆらぎを感じさせると共に東山にかかる雲海を想起させ、夜間景観では照明によってよりゆらぎが強調されている。
本堂の障子をイメージした光壁が迎える車寄せから、くろ谷からの水の流れを継承した水景に沿って参道のようなアプローチが続き、登りきった先には雁行しつつも緩やかに連続する間接照明とともに繋がるロビー・レストランが広がり、別院境内と一連となった庭園を望むことができる。
様々な壁面仕様、天井仕様によらず、いずれの光も美しくまとまっている印象。
実にうなずけるコンセプト設定を、見事に具現化した秀逸の作品と感じた。