内湾地区は気仙沼の中心街で、海と町が一体となった美しい港町の景観が魅力である。東日本大震災の復興計画策定の中、住民主体の内湾地区復興まちづくり協議会が設立され、建築・ランドスケープ・照明のデザイナーの協力も得ながら、模型ワークショップや行政担当者及び土木設計・工事関係者とのデザイン調整会議等を通じ防潮堤のデザイン検討が進められた。
魚町の防潮堤は、海への眺望を重視し、町から見た高さを低く抑えた。南町の防潮堤は、海側の岸壁と町側をシームレスな空間とした。防潮堤の海側に斜面緑地・ステップガーデン・回廊などを配置した。更に、町側に配置した公共建築から片持ちで張り出したデッキで防潮堤を覆い隠し、海と町の連続性を確保した。
複合公共施設を含む内湾地区全体を統一した光環境とすることで、主体を飛び越えてシームレスな夜景観を演出している。また、内湾に面する建物や街灯から染み出した光が水面に映り込むことで、内湾の地形を効果的に浮き立たせ、内湾の存在を人々に認識させている。
さらに、建物周りに設置された照明が空間の認知を促すことによって防犯性を高めるだけでなく、災害時の円滑な避難誘導が期待できる。