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平成25年度(第46回)照明学会全国大会 照明デザイン分科会
照明環境調査WG企画イベント
「名古屋の街あかり調査ワークショップ」(光の英雄と犯罪者を探せ!) 開催報告

 平成25年9月照明学会全国大会(於:名古屋大学)にあわせ、照明探偵団の面出氏御指導を頂きながら、名古屋市街地をリサーチし、あかりについて考えるワークショップを開催しました。

 ワークショップ参加者は計50名に上り、名古屋大学、愛知県立芸術大学、東京理科大学の3チームに分かれ、各チームを面出氏他、活躍中の照明デザイナーの方々に引率頂き、市街地照明のリサーチ(照明手法、機種、配置、照度、輝度計測他)を実施しました。
 調査後名古屋テレビ塔に集合、早々リサーチ結果概要を発表、その後、場所を変えて具体的なリサーチまとめ方について討議に入るという、バイタリティー溢れるワークショップでした。
 加えて翌日早朝から名古屋大学に集合、リサーチ結果の更なる解析+提案に至る内容をパネル化、午後から各チーム発表、合評会を実施するという、かなりのハードスケジュールながら、達成感の高い充実したワークショップとなりました。

 今回参加頂いた3大学の学生代表者、及びプロ指導員からのコメントを以下に記します。(敬称略、順不同)


地下街コース

名古屋大学: 日比野 一江

 先日のワークショップを通じて、名古屋の照明の現状を知ることができました。私は名古屋栄の地下街の照明を調査しました。名古屋の地下街は昭和の雰囲気が残っており、レトロな雰囲気が漂うところもあれば、すたれてしまっているところなど、問題点も多くうかがえました。街の照明と向き合い、面出先生を筆頭に専門家の方々からのご意見も伺えて、街の照明設計の重要度がわかり、照明への興味が高まりました。貴重な体験ができた2日間となりました!

プロ指導員: 富田 泰行

 日本にデザインサーベイの概念が持ち込まれて半世紀ほど経つようだ。まずは街に出てよく観察し、客観主観織り交ぜながら一枚の記録写真について言葉を交わし全体をひもといていく。ワークショップの価値はそのプロセスにあると思っている。名古屋の街を見慣れている人/初めて訪れる人、学生/社会人/専門家など立場の違う人たちがそれぞれの視点で街の光を観察し、記録し、分析する。地下街は通路、商空間、待合休息空間など多目的な複合空間である。安全・安心や機能・演出と光も多様であり、その分析と評価にはなかなか難しい局面もあったようだが、光が私達の日常にどのように作用しているかを体感するいい機会であったのではないかと思う。

100m道路コース

東京理科大学: 横川 貴明

 普段、研究室で行っている照明環境調査はあくまでデスクワークを中心としており、また建築の内部空間を対象としたものが大半であるのに対し、限られた時間を有効に使って、街を測定しながら歩き回る外構の照明環境調査は非常に新鮮でした。なによりも、調査や食事会、その後の話し合いを通じて、照明分野の第一線で実際にご活躍しておられる方々の生の意見を聞くことができ、とても貴重な経験をさせて頂くことができました。

プロ指導員: 吉澤 望

 今回のワークショップは、当日の活動だけではなく、準備にほぼ半年をかけた関係者の皆様の多大なご助力のもとに成立したものです。多数のプロの方々に囲まれながら一緒にリサーチやパネル製作を行うという、若い学生にとっては本当に贅沢な経験だったと思います。100m道路は名古屋のメイン道路ということもあり、都市の中心にあれだけ広大なスペースが確保されているという面白さを改めて感じましたし、それだけに夜間の都市活動の魅力を高めるという点から、照明の面からまだまだ新たな仕掛けが可能ではないだろうかという気がいたしました。そのことがパネル発表を通して少しでも多くの方にお伝えすることができていれば何よりです。最後にこのような若手を含めた活動が今後ともうまく続いていくことを期待しております。

広小路通コース

愛知県立芸術大学: 董 芸

 今回名古屋の街あかり調査ワークショプに参加させていただき、タイトではあったが新しい発見の連続2日間でした。普段何気なく過ごしている栄の街中を、ただ通すぎるのではなく、あかりのヒーローと犯罪者を見つけるというテーマを頭に巡らしながら、歩いてみると名古屋らしさというものに改めて触れることができました。良い意味でも、悪い意味でも『派手な』名古屋を良くして行くにはというポイントから、ビルのファーサードのライティングデザインや、樹木の多い広小路をライトの当たる対象物により、人の気配を感じさせるデザインを提案させていただきました。今回のワークショップを通してあかりを考える、名古屋のあかりについて考えるすごくいいきっかけになりました。

プロ指導員: 松下 美紀

 照度や距離を測る、スケッチをする、写真を撮る、記録する、それぞれの役割を持って光の犯罪者を探す厳しい目、英雄を見つけた時の笑顔。名古屋の広小路には歴史を感じる通りや高価な街灯など名古屋ならではの夜の景色がたくさん。個性ある路地がそれぞれに名前を持ち、魚の骨のよう広がっていました。限られた時間では、すべてを調査することは叶いませんでしたが、調査を終えたときの学生諸君の顔が生き生きしているのが印象的で、実に魅力ある調査と発表でした。ぜひこれを機会に、今回のチームで再度集まり、調査できなかったすべての通りをリサーチして、引き続きこれからの名古屋らしい美しい夜間景観を創出してほしいと祈念しています。


 短時間の活動ながら体力的にハードなワークショップでしたが、参加者の皆さん、特に学生諸君のあかりに対する感性が瑞々しく、出来上がったパネルには、永年照明に係ってきた我々がはっとするような気付きも見られ、有意義この上ない活動となりました。  
 眠れる頭に一蹴り・・・と豪語できるような活動を、照明デザイン分科会は今後も企画継続して参りたいと存じます。今後の企画への皆様のご参加をお待ちしております。

幹事長総括: 面出 薫

名古屋の街あかりワークショップを終えて

 私は1990年から照明探偵団という名を使って様々なフィールド照明調査やワークショップを行ってきましたが、今回の名古屋の街歩きはその照明探偵団街歩きの学会編という感じでした。大切なことは照明の事件を現場で実証的に体感し記録することです。都市照明を文化として語り合うには、街の光環境を深く観察しそこに潜む光の英雄と犯罪者を探し出すことです。これが都市照明を評価するうえでの基本動作なのです。
 事前調査や説明会を行ったために、当日のタイトな日程にもかかわらず内容の濃い調査とまとめとプレゼンテーションをすることができました。もう少し発表の時間が長く取れれば、プレゼン内容に対する質疑応答や、各班からの照明の改善提案などについても深い議論ができたのではないかと思いました。
 今回は学会の関係者だけでなく(株)遠藤照明から協賛をいただき、スタッフの方の献身的な協力をいただきました。この場を借りてお礼を申し上げます。

ワークショップ概要 (期間:平成25年9月5日〜7日):

9月5日(木) 17:00  名古屋テレビ塔に集合、調査活動説明
調査班(3チーム)分け、撮影、計測、記録等役割分担の後、各班市街地調査を開始。公園を有する100m道路、地下街(オアシス21を含む)、広小路通、を調査
20:00 調査後、懇親会(テレビ塔)にて簡単な報告・まとめを実施
その後場所を移しグループごとのワークショップを実施
9月6日(金)
 8:00 照明学会全国大会会場(名古屋大学)にて展示パネルの作成実施
12:00 各班15分(+コメント10分)で成果発表会
13:00 発表会後、会場ホールにパネル展示
9月7日(土)   大会終了までパネル展示