照明学会論文賞
照明学会論文賞は過去2年間の照明学会誌、英文誌に掲載された論文の中から特に優れたものの著者に対して与えられるもので、本賞は平成元年に創設され、今回は22回目になります。今回の受賞論文は次の2件です。
平成22年度照明学会論文賞
論文名:「上方光束制御の異なる街路照明器具による視認性評価実験および等価光幕輝度算定に基づく考察」
(照明学会誌第92巻8A号(2008)に掲載)
正会員 岩田三千子(摂南大学) 非会員 内田重美(東亜天文学会)
環境省の勧告に沿って光害低滅に配慮した上方光束比0 %の街路照明器具と周辺環境に配慮した上方光束比12.6%の街路照明器具とを対象に、若年者と模擬高齢者を被験者として、見え方および街路の印象について評価実験を行っている。さらに、CIEの等価光幕輝度計算式を用いて、グレアの影響について若年者と高齢者の此較考察を行い、それぞれの器具の優位点と課題を把握し、グレアが視認性に悪影響を及ぼすこと、照度を高くするよりも上方光束を抑えることで視認性の改善が図れることを明らかにしている点が評価された。
論文名:「ハロゲン電球におけるタングステン輸送現象の解析のための熱流体−化学平衡複合モデル」「熱流体−化学平衡複合モデルによるハロゲン電球 タングステン輸送現象の検証」
(照明学会誌第93巻11号(2009)に掲載)
正会員 別所 誠(東芝ライテック(株)) 非会員 大河 正志(新潟大学)
(本件は、上記2件の論文を併せて1件の表彰事項とします。)
- 前半では、ハロゲン電球における従来の化学平衡モデルを発展させた熱流体―化学平衡複合モデルの詳細な検討結果を論じている。このモデルは(1)熱流体の解析、(2)化学平衡計算、および(3)それらのインターフェイスの3つの解析ソフトを組み合わせることにより、実際の管内現象を熱流体と化学平衡とを関連させながら同時にシミュレートする方法であり、このような解析方法を詳細に報告した点に新規性がある。また、具体的にはランプやフィラメントの形状、3次元解析格子、熱流体境界条件などの設定方法に工夫が見られる。結果は時系列に可視化されており分かり易い。従来のモデルではサイクル反応がバルブ内部の全領域にわたっていたことに対し、このモデルで得られた結果では、対流が滞留する部分で集中的に行なわれている点が大きく異なり、新たな知見となっている。
- 後半は、この熱流体―化学平衡複合モデルによりハロゲンサイクルを再現して、実際の寿命試験による観察結果および従来の解析方法との比較を通して、タングステンやハロゲン化合物の輸送過程について考察した。特にタングステンの析出について、今回のモデルの方が従来の化学平衡モデルよりも実験の結果に近かった。このことにより、新しいモデルではより正確なタングステンの析出領域の予測が期待できる。また、このモデルでは、系の形状や境界条件により変化する生成物の分圧分布の変化も予測できるので、不純物がハロゲン電球の信頼性に及ぼす影響やハロゲンの適正封入量のより高い精度での予測が可能になると考えられる。
・今後期待される研究内容
蛍光灯やHIDランプなどの高効率光源が普及してきた今日においても、ハロゲン電球は、光源が小さいことによる光利用効率の高さ、光の質の優位性、調光の容易性などで広く使用されている。今回のモデルでは、寿命特性に大きく影響するタングステンの析出する領域について従来のモデルよりも実際に近い結果が得られており、従来の説明とは異なる解釈が求められている。この点について、さらにモデルを緻密化し、検証すれば、ハロゲン電球の信頼性向上および設計の適正化に有効な手段とすることができると期待される。
照明学会論文賞の決定は、毎年4月に行われ、全国大会にて表彰されます。
照明学会論文賞受賞者一覧